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4月12日付 編集手帳

 何年か前、『読売俳壇』で読んだ句がある。〈職探す人に幸あれ啄木忌〉(上田久幸)。仕事を探して各地を転々と放浪した歌人に、現代の就職難を重ねている◆仕事がなければ生活が立ちゆかない。ましてや病身となれば、薬代さえ滞る。〈質屋から出して仕立直さした(あわせ)と下着とは、たった一晩家においただけでまた質屋へやられた〉。石川啄木は最後の記述となった1912年(明治45年)2月20日の日記にも金策の憂いを(つづ)っている◆あり余る詩才を抱きつつ、処世の苦しみ多き26年の生涯を閉じたのはその年の4月13日、あすで100年になる◆たとえば仕事を詠んでは、〈気の変る人に(つか)へて/つくづくと/わが世がいやになりにけるかな〉。望郷の念をうたっては、〈やまひある(けもの)のごとき/わがこころ/ふるさとのこと聞けばおとなし〉。自分の心境そのままだ…という人もあろう。十年ひと昔、その昔を十つらねた歳月を経て少しも古びることのない、奇跡のような歌人である◆かつて啄木歌集には誤植が多いと言われた。印刷所の文選工が原稿をつい身につまされて読み、涙で目が曇ったという。

2012年4月12日01時33分  読売新聞)

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