公務員などの共済年金と会社員の厚生年金を一元化する法案が閣議決定される。官民格差の是正が目的だが、共済独自の上乗せ給付など優遇措置の見直しは先送りした。温存されては困る。
社会保障と税の一体改革で重要な柱の一つが国家公務員と地方公務員、私立学校教職員の三つの共済年金と厚生年金の統一だ。
厚生より低い共済の保険料率を引き上げ、官民格差を是正する。二〇一五年十月に統合する。
だが、給付の優遇措置として問題視されてきた共済の職域加算の決着は、先送りされた。共済では給付額が月約二万円上乗せされる。財源は公費(税)である。
法案で加算の廃止は決まったが、政府はそれに代わる上乗せの新制度を法案とは別に有識者会議を設けて検討する意向だ。
これでは優遇措置が形を変えて復活しかねない。自ら保険料を払い、上乗せ分の給付を受けるのなら分かるが、税が投入される新制度は許されない。
官僚は「職域加算は退職金の分割払い分だ」と主張する。だが、退職金も民間に比べ多額だ。人事院が三月に公表した調査では、民間の退職金約千四十二万円に対し、国家公務員の退職手当は二千七百七万円と二・六倍ある。
これに退職手当の一部として職域加算約二百四十三万円が上乗せされている。しかも退職金が大手より少ない中小企業の多くは調査対象には入っていない。年金だけでなく退職金額も民間との格差是正が必要ではないか。
さらに共済の財源に国や自治体から税が投入されている。共済年金制度が始まる前の恩給制度のなごりで、税から給付が続く。
受給対象者は年々減少しているとはいえ、国と地方を合わせて約百九十万人いる。負担額は国・地方合わせ年間一兆円を超える。
法案では減額も打ち出したが、削減額は年間千五百億円ほどである。受給者と給付額を約束している以上、無理な減額は困難だが、さらなる減額は検討すべき課題だ。
共済の事務を扱う組織は国で二十組合、地方で六十四組合あるが存続する。天下り先として温存される懸念がある。厚生を扱う日本年金機構への統合が自然である。
法案は〇七年に自公政権がまとめた一元化法案とほぼ同じで、民主党が政治主導を発揮したとは言い難い。中途半端な改革では官民格差をなくすことはできない。
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