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きのうの党首討論は、物足りない内容だった。消費増税法案が国会に提出されたあと、初めて党首同士が向き合ったが、法案の中身の議論には至らず、「入り口論」で互いに言い合うばか[記事全文]
国家のすべての活動は労働党の指導の下で行う。北朝鮮の憲法にそうある。その党の「第1書記」に金正恩氏が就いた。これまで党の最高ポストは総書記だった。昨年末に死亡した父親の[記事全文]
きのうの党首討論は、物足りない内容だった。
消費増税法案が国会に提出されたあと、初めて党首同士が向き合ったが、法案の中身の議論には至らず、「入り口論」で互いに言い合うばかりだった。
自民党の谷垣禎一総裁は「党首討論こそが、国民の前に開かれた最高の議論の場だ」と口火を切った。
法案提出前の与野党協議も、法案提出後の党首会談にも応じなかったぶん、この場で何をただし、どんな答えを引き出すのか。私たちも注目した。
だが、野田首相が法案に政治生命をかけていることを確認した程度で、建設的な議論とはほど遠かった。
谷垣氏は、消費増税に対して民主党内で異論が相次ぎ、国民新党の亀井静香前代表が離党したことに触れて、「我々に呼びかける前に、連立の中をきちっとまとめる」よう求めた。
さらに民主党側から、法案を審議する委員会など具体的な提案がないと指摘し、「審議を早く進め、採決に至ると、党の中がまとまらないおそれがある」からではないかと問い詰めた。
たしかに、与党内のバラバラぶりは目に余る。法案の審議入りの日程すら固まらないのは、いかにも奇妙だ。
野党がいうように、民主党執行部が党内の対立激化を恐れて腰が引けているのだとすれば論外である。与党が審議の場や段取りなど具体的に提示して、協力を求めるのが筋だ。
しかし、これが党首同士で議論しなければならないことなのか。国対委員長や議院運営委員会で詰めればいい話だ。
初めて討論に参加したみんなの党の渡辺喜美代表は、野田、谷垣両氏の議論を「手続き論ばかり」だと非難し、「やろうとしていることは、ほとんど変わりがない」からだと指摘した。
その通りである。
きのうの討論でも、増税の必要性については両氏の足並みはそろっていた。
だからこそ、消費増税の具体的な制度設計や、税制全般の改革、社会保障制度改革の中身の議論ができたはずだ。
少子化、高齢化が進むなか、どのように持続可能な社会を築くのか。人口増加や経済成長を前提に組み立てられた雇用や年金などの諸制度を、どうやって時代に合わせて改めるのか。増税による負担増を緩和するために、どんな低所得者対策を講じるのか。
これらを論じ、国民をまきこんだ議論を喚起していく。そんな党首討論が見たかった。
国家のすべての活動は労働党の指導の下で行う。北朝鮮の憲法にそうある。その党の「第1書記」に金正恩氏が就いた。
これまで党の最高ポストは総書記だった。昨年末に死亡した父親の金正日氏を「永遠の総書記」に奉ずるのだという。
似た例があった。金日成氏を「永遠の国家主席」にして主席職をなくし、息子の正日氏が就いていた国防委員長を最高職位に格上げした。
「父を敬う」という姿を示して総書記職をなくし、新たに党の最高職位として「第1書記」を設けたのだろう。
いずれにしても、正恩氏が3代世襲の最高指導者に正式になったことは間違いない。
あすは国会に当たる最高人民会議が開かれる。そこでも正恩氏が国家機構の最高職に就くとの観測が強い。
困窮する住民の生活と疲弊した経済を立て直す。国際的な孤立から脱する。そういう重い職務が、30歳に満たないとされる若い指導者の双肩に名実ともにのしかかるわけだ。
それにしては、目立った最初の行動が、事実上の弾道ミサイル実験でもある「人工衛星」の打ち上げとは、何とも代わり映えがしないではないか。
すでに燃料の注入が始まり、発射は秒読み段階だ。
指導者ポストへの就き方といい、脅威をあおる刺激的な挑発行為といい、先代の路線を踏襲するだけだ。
金正恩第1書記には、大きな権力が与えられるはずだ。だが統治の経験がない。脇を固める側近たちを頼りにして、しのいでいくしかなかろう。第1書記を頭に頂いて、実質的には集団指導体制である。
新指導者の能力も性格も、今なおわからない。自信をつけて権力者として横暴に振る舞うことはないか、さらに危険な挑発を繰り返さないか。私たちも注視していかねばならない。
まず胸に刻んでほしいのは、ミサイルを飛ばしたり核実験をしたりしても、北朝鮮が急を要する経済や社会の再生は達成できないということだ。
果敢に変化することを恐れ、父の遺訓などにすがって統治しても、世界の不信感が解けることはないだろう。飢えた国民を救うこともできまい。
真っ当なメンバーとして世界にかかわる。現実的な政策を進め、国際社会の協調を得ないことには北朝鮮は立ち行かない。
北朝鮮がそういう道を歩み出すよう、日本をはじめ周辺の関係国は積極的に関与し、転換を粘り強く促していくべきだ。