HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 10 Apr 2012 21:22:17 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 桜が満開だった日曜日、会社の俳句仲間と吟行に出掛け、小石…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 桜が満開だった日曜日、会社の俳句仲間と吟行に出掛け、小石川後楽園あたりで舞う花びらを見ながら駄句をひねった。句会での評判は芳しくなかったが、開放された気分になった▼風は吹くな、と叫ぶ酔客がいた。ずっと桜を眺めていたいという気持ちも分かるが、散りゆく桜に無常感を重ねるのは、日本人の感性ではなかろうか▼その源流は江戸歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』という説がある。塩冶判官(えんやはんがん)(浅野内匠頭)が切腹する場面を臨場感たっぷりに盛り上げたのは、舞台いっぱいに飾られた桜と花吹雪の演出だったという▼「さくらは散り際美しい武士の花という桜観が、能楽の観客などよりも遥(はる)かに広い層の観客に定着した」(小川和佑著『桜の文学史』)。散る桜に死の影を見るという感性は、幕末の志士や軍人たちに引き継がれた▼明治以前の桜見は樹齢数百年の大木もある山桜が対象だった。「奈良・平安の時代から、桜は死の花ではなく生命の再生を予感させ、新しい生命誕生の美の女神として考えられてきた」(唐沢孝一著『江戸東京の自然を歩く』)。豪華絢爛(けんらん)に咲き一斉に散るソメイヨシノは幕末以降、全国に広がった。軍国主義のシンボルになったのは不幸だった▼自粛ムードだった昨年の反動なのか、急性アルコール中毒で救急搬送される人が増えているという。散る桜は静かに愛(め)でたいと思う。

 

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