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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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イランに痛い目に遭わされた一人にカーター元米大統領がいる。在任中に米大使館員人質事件が起き、救出作戦は無残に失敗した。「弱腰大統領」の烙印(らくいん)を押され、2期目の選挙でレーガン氏に惨敗する▼だが退任後は、特使などで世界を飛び回って紛争解決に努めた。平和と人権を重んじ、指導者と差しで話し合うのを持ち味とした。ノーベル平和賞を受けたとき、かつての色あせた評価は「ホワイトハウスを去ったあと最も尊敬される元大統領」の称賛に変わった▼そのカーター氏に倣(なら)おうとしたかどうか。鳩山由紀夫元首相が政府の中止要請を振り切ってイランに出かけた。そして一騒動あった。鳩山さんが国際原子力機関を批判し、(核開発の進む)イラン寄りの発言をしたと、先方の大統領府が発表した▼日本国内では「宇宙人」でも国際的には元首相の肩書は軽くない。結局発言は削除されたそうだが、後味は苦い。のこのこ出かけ、海千山千の相手に「鴨葱(かもねぎ)」を地でいくように利用されかけた▼今回ばかりではない。鳩山さんは退陣後も川柳欄をにぎわす人気者だ。〈出てきては政治を引っ掻(か)き回すハト〉〈口害が糞(ふん)害よりもひどい鳩〉。まだまだある。政治のごたごたに一役も二役も買ってきた証しである▼思えば鳩山さんもカーター氏も愛と善の人だろう。だがカーター流のリアリズムを欠いては、ただの好人物になってしまう。僭越(せんえつ)ながらそろそろ晴耕雨読はいかがだろうとも思う。全国の川柳家に惜しまれながら。