北朝鮮が人工衛星と主張するミサイルの発射が迫っている。並行して核実験準備の動きもある。本当の目的は核弾頭を搭載できる長距離弾道ミサイルの実験ではないか。疑いは強まるばかりだ。
北朝鮮は十二〜十六日の発射を予告し、八日、北西部・東倉里の発射場を一部外国メディアに公開した。
「平和的な宇宙開発のため」と主張し、衛星を運ぶというロケットは全長三十メートルで既に発射台に設置された。しかし二〇〇九年六月に採択された「弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も認めない」という国連安全保障理事会決議に違反する。衛星だと主張しても、認めることはできない。
北朝鮮は二月末に、米国との間で弾道ミサイル発射や核実験の一時停止で合意したばかりだ。反古(ほご)にするなら、米国だけでなく国際社会全体の信用を失うだろう。
日本、中国、韓国の外相会談では発射自制を求めると確認し、安保理の対応についても意見交換した。残された時間は少ないが、中国がもう一度、北朝鮮を説得するよう強く望む。
各国は射程延長を警戒する。〇九年の「テポドン2号」の飛行は三千キロ以上と確認された。今回、射程が延びれば大陸間弾道ミサイル(ICBM、射程五千五百キロ以上)に近づく。
さらに気掛かりな動きがある。韓国各メディアは米衛星写真に基づき、かって二回核実験をした北東部・豊渓里で新たな坑道が掘削されるなど、三回目の実験を準備中だと報じた。
北朝鮮は核兵器の原料となるプルトニウムを二十数キロ、核爆弾にして五、六発分保有するといわれる。ウラン濃縮も続けている。
軍事優先の路線を進める限り、発射の目的は小型化した核弾頭を載せる「核ミサイル」の開発だと言わざるを得ない。配備されたら周辺国には深刻な脅威になる。国際社会は包囲網を固め直し、ミサイル技術が核兵器に転用されることを阻止しなくてはならない。
発射されるミサイルの部品や破片が沖縄県近くの日本領海に落ちる危険性もある。自衛隊はイージス艦三隻を派遣し、石垣島などに地上発射型迎撃ミサイル「PAC3」を配備した。
故金正日総書記の三男、正恩氏は十一日に労働党総書記に就任すると予想される。権力世襲の最初の仕事がミサイル発射になるのなら、外交は完全に逆風を受ける。
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