HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 35859 Content-Type: text/html ETag: "ec386-272a-54245100" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 09 Apr 2012 22:21:20 GMT Date: Mon, 09 Apr 2012 22:21:15 GMT Connection: close
朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
付け焼き刃という言葉は、中世の刀鍛冶(かじ)の用語だという。切れの良くない刀に鋼(はがね)の刃を付け足したものを言い、転じて「にわか仕込み」を表すようになった。関西電力大飯原発の再稼働をめぐって、政府がわずか3日で作った安全対策の基準に、その手の批判がやまない▼しかも基準は甘い。再稼働ありきという「靴」に合わせて、足の方を削った印象だ。クリアできるものばかりを並べた、との声もある。週内にも「安全宣言」をするらしいが、さて、信を置けようか▼経産相の枝野さんには、官房長官時代の「ただちに健康に影響はありません」が重なる。発言が迷走するのは、思いと職責のはざまで揺れるゆえとお見受けする。ともあれ、ゴマカシの上塗りはもう御免こうむる▼再稼働は「政治判断で」と言うが、そもそも政治が信に乏しい。関電の筆頭株主である大阪市の異議が強いため、「大阪を広域停電させるしかない」との声も閣内に出たそうだ。ピントのずれた、思い上がった人たちである▼ギリシャ神話で人類に火を与えたプロメテウスには、エピメテウスという弟がいたと、かつて小欄でふれた。思慮を欠く弟が妻に迎えたのが、あのパンドラだった。美貌(びぼう)の妻だが、禍(わざわい)の箱を開けて不幸をまき散らしてしまう▼プロメテウスの名には「先に考える男」という語意がある。片や弟は「後で考える男」の意味だという。原初の火から、いま原子の火の時代。兄弟の物語は、拙速と浅慮への戒めとして、再稼働に重なる。