核兵器開発疑惑をめぐるイラン情勢などを背景にガソリンが三年半ぶりの高値となった。価格引き下げに奇策はない。教訓は地道に培ってきた省エネであり、それが資源小国・日本の進むべき道だ。
レギュラーガソリンの今月二日現在の全国平均小売価格が一リットル=一五八円三〇銭にまで上昇し、七週連続の値上がりとなった。
日本はガソリンの原料となる原油の八割以上を中東の産油国から輸入しており、全消費量の約一割をイランに頼ってきた。そのイランの核開発疑惑に対し、米欧が足並みをそろえてイランからの輸入禁止などを決定したため、供給不安の観測が広がって価格を押し上げている。
日本が依存しているドバイ原油は一バレル=一二〇ドル台に上昇し、このところの円安も値上がりに拍車をかけている。ガソリンの高騰で消費者物価が上昇し、東日本大震災の復興需要に伴う消費の伸びに冷水を浴びせかねない。
消費量の約四割を輸入する自動車大国の米国では、政権批判が噴き出す一ガロン=四ドル目前に迫り、今秋の大統領選で再選を目指すオバマ大統領を慌てさせている。
しかし、米国では地中の岩盤に眠るシェールガスに続きシェールオイルの生産も始まり、二〇二〇年代には日本の消費量に匹敵する日量四百万バレルの生産が見込まれている。自給率引き上げが可能な国と、輸入に頼らざるを得ない国との決定的な違いだ。日本は資源小国ならではの知恵が欠かせない。
日本の石油需要はピーク時、一九九九年の二億五千万キロリットルから、二〇二〇年にはほぼ半分の一億三千万キロリットルに減少する見通しだ。一九七〇年代の二度の石油危機を境に低燃費の小型車などを開発し、20%を超える省エネを実現させた成果といっても過言ではない。
今では一リットル当たり三十キロ以上走るという小型ハイブリッド車や軽乗用車の生産が間に合わず、半年待ちが常態化している。
省エネ技術の進歩に日本経済の脱重厚長大が加わり、国内総生産(GDP)を生み出すために原油をどのくらい投じているかを示す数値が劇的に下がってきた。原油高騰への耐久力は着実に強まっている。
ガソリン高騰は大量に消費する中国、インドなどの新興国を直撃するだろう。七〇年代に勝る省エネ技術を国境を越えて浸透させ、ずぶとく経済再生にもつなげていく。今の日本は、そうした強靱(きょうじん)さが何よりも求められる。
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