HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49105 Content-Type: text/html ETag: "f6bae-1343-4bd0533385c85" Expires: Fri, 06 Apr 2012 23:21:17 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 06 Apr 2012 23:21:17 GMT Connection: close 4月7日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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4月7日付 編集手帳

 列車に、姉弟が乗ってきた。姉は12歳ほど、弟は6歳ぐらいか、家庭教師とおぼしき青年が付き添っている。男の子の髪は()れ、はだしで震えている。いぶかる乗客に、青年は語った。「氷山にぶつかって船が沈みましてね」◆救命ボートに全員は乗れない。自分たちは、小さな子供や親たちを押しのけてまで助かろうとは思いませんでした、と。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』である◆「タイタニック」の名前は出てこないが、死者の数1500人を超えた惨事は日本でも大きく報じられた。当時15歳という多感な年頃の賢治がのちに3人の霊魂を銀河鉄道の旅人として招いたのは、鎮魂の祈りからであったに違いない◆豪華客船タイタニック号が大西洋で氷山に衝突沈没したのは1912年(明治45年)4月15日、まもなく100年を迎える◆最新鋭の客船という人知の結晶が、自然の猛威の前に一瞬にして壊れ去る…。大震災で胸をよぎった無常の思いに、どこかしら通じるものがある。この1年、賢治の『雨ニモマケズ』を心の支えにしてきた被災者の方も多かろう。悲しみのあるところ、いつもその人がいる。

2012年4月7日01時30分  読売新聞)

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