何となく落ち着く取り合わせというものがある。「酒」とくれば「演歌」でロックやクラシックではない▼同様に「梅」に「鶯(うぐいす)」、「松」には「鶴」で、太宰治説なら「富士」には「月見草」だ。落語も教えるように「まんじゅう」には「渋いお茶」で、コーヒーや紅茶ではまずい。その他の例は読者各位にお考えいただくとして、これもその一つかと思う。「入学式」に「桜」▼土地によって違うし、毎年、うまく開花時期が重なるわけではないが、今年は、この絶好の取り合わせを見られる所が少なくなさそうだ。今日が入学式という学校も多い。小学校なら、大きなランドセルの小さな一年生たちに桜が「おめでとう」とほほ笑みかけよう▼少し前には多くの企業で入社式もあった。人事異動期でもあり、住まいを移った人も多いはず。「新入生」に「新入社員」に「新住所」…。今の時分を漢字一文字で表せば「新」が適当か▼年のせいか、ふと浮かぶのはこんな歌。<もゝちどりさへづる春は 物ごとにあらたまれども 我ぞふりゆく>(古今集)。春はいろんなものが新たになるが私だけが古びてゆく…▼そういえば、世界標準に合わせた新機軸で、「桜」とは懸け離れた「秋」に「入学式」を検討中の大学もある。利点は理解できるが、やはり何だか落ち着かぬ。この感覚も<我ぞふりゆく>ということかしら。