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4月4日付 編集手帳

 「エオリアン・ハープ」を見たことがある。何年か前に訪ねた浜松市の楽器博物館に展示されていた。古代中国から中世ヨーロッパに伝わった弦楽器という。人の手によらず、風が弦を震わせる◆音の高低も強弱も風まかせで“演奏”に巧拙はなかろうが、四季でいえばやわらかな春の風が似合いの弾き手だろうか…と、調べを想像して楽しんだ覚えがある。どうしてどうして、春の風にもとんでもないのがいる◆日本海を北上する低気圧によって、列島は西日本から東日本の広い地域にかけて台風並みの暴風雨に見舞われた◆詩人高橋順子さんの『風の名前』(小学館)によれば、西日本には人の行く手を阻む春の嵐に「不通坊(とおせんぼう)」という名前があるという。交通網を寸断したきのうの風がそうだろう。「(かい)寄風(よせ)」「(はる)疾風(はやて)」などハープで聴きたい風は幾らもあるというのに、よりによって「不通坊」とは、無粋にして迷惑の極みである◆まだ慣れない営業の外回りに出た新社会人諸君のなかには、なかなか来ない電車を待ちながら、壊れた傘の残骸を手にして途方に暮れた人もいただろう。風よ、少しは考えて吹け。

2012年4月4日01時48分  読売新聞)

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