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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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酒豪のことを英語で「スリーボトルマン」と言うのは写実的だ。つまり酒瓶3本男。中国語だとこれが「海量(ハイリアン)」になる。海ほどの量を飲むという、「白髪三千丈」ばりの誇張が中国らしい。言葉としては面白い。だが、決してまねることなかれ、である▼春がめぐり花が咲き、今年も「アルコール・ハラスメント(アルハラ)」が案じられる時節になった。新入生や新入社員ら、後輩を迎えた面々はつい張り切りがちだ。宴が暗転せぬように、先輩らしい自戒が要る▼強要はむろんだが、断れない雰囲気を作るのも、酒以外の飲み物を用意しないのもアルハラにあたるという。本紙記事によれば、この10年に飲酒に関連して死亡した若者は21人を数える。あたら……の思いが募る▼この季節、満開の桜の下も危ない。東京消防庁によれば、花見の宴から救急車で搬送されるのは20代が断然多い。世慣れしない初々しさが、往々にしてあだになる。堂々と杯を伏せるのも作法と心得たい▼酒について英国の元首相チャーチルは言ったそうだ。「アルコールが私から取り出したものより、私がアルコールから取り出したものの方が多い」、と。飲んべえながら仕事は果たし、人生をユーモアに丸めた達人はさすがだった▼日本には「浅酌(せんしゃく)」というゆかしい言葉がある。忘れられたような二文字だが、静かにほどよく酒をのむことを言う。酒の側に他意はない。百薬の長か、それとも災いと病の種か。洋の東西を問わず、つまりは人次第となる。