HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 02 Apr 2012 21:21:16 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 遅れてきた春一番のような暴風雨とともに、別れの季節が過ぎ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 遅れてきた春一番のような暴風雨とともに、別れの季節が過ぎ、出会いの四月が始まった。着慣れないスーツ姿の若者たちが、社会人として新たな第一歩を踏み出した▼大人とは、すれっからしになること。そう思い込んでいた少女がいた。立ち居振る舞いの美しい素敵(すてき)な女性から聞いた言葉を、少女は後に詩に書き留めた▼<初々しさが大切なの/人に対しても世の中に対しても/人を人とも思わなくなったとき/堕落が始まるのね 堕(お)ちてゆくのを/隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました>▼背伸びをしていた少女は、どきっとして悟った。<大人になってもどぎまぎしたっていいんだな/ぎこちない挨拶(あいさつ) 醜く赤くなる/失語症 なめらかでないしぐさ/子供の悪態にさえ傷ついてしまう/頼りない生牡蠣(がき)のような感受性/それらを鍛える必要は少しもなかったのだな>(茨木のり子「汲(く)む」)▼苦手な人の前では、どこかぎごちない。緊張すればどきどきする。他人のちょっとした言葉で傷ついてしまう。でも、それでいい。強さの鎧(よろい)をまとうことで、大事なものが失われることもあるのだから▼自らの感受性を信じた詩人は見抜いていた。<あらゆる仕事/すべてのいい仕事の核には/震える弱いアンテナが隠されている きっと…>。少し肩の力を抜いて、人と比べずに新しい人生を歩いてほしい。

 

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