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天声人語

天声人語のバックナンバー

2012年4月1日(日)付

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 旅先で目覚め、初めての地にいるんだと高ぶることがある。昨日までとは違う一日の始まりだ。春荒れ一過のこの朝を、社会に出る皆さんはどんな思いで迎えただろう。望んだ道でも、スタートラインの白さに気後れするのが常人である▼〈あの時夢に見ていた世界に立っているのに/見渡す景色に足を少しすくませ/だけど後ろ振り向かないで/歩いてゆくこと決めたから……〉。すべての新社会人に、平原綾香さんが歌う「はじまりの風」を贈りたい▼この春の就職内定率は、震災復興の仕事が増えたことで大学生、高校生とも去年を上回った。むろん正規雇いばかりではない。始まりが順風でなくても、まずは力の限り一歩を踏み出そう▼門出に心苦しいのは過去から転がってきた国の借金だ。1千兆円に迫る雪だるまを止めようと、消費増税の法案が提出された。5%を2年後に8%、1年半おいて10%へ。負担感は低所得層ほど大きい。借金の先送りで苦しむのも、差し当たりきついのも若い世代である▼振り向かずに突き進む野田首相は、向かい風の中にある。小沢一郎氏の仲間は辞表攻勢をかけ、連立相手の国民新党は割れた。頼みの自民党も「まずは解散」とつれない▼この増税政局、詰まるところ政治家の度胸と度量を問うている。権力欲だけで議員になったわけではあるまい。ここは、国政へと背中を押した「はじまりの風」を思い起こすべし。きょうの暮らしと国の明日が危うい時に、政策より政局のわけがない。

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