HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 32122 Content-Type: text/html ETag: "1107845-5ca6-72aa0bc0" Cache-Control: max-age=4 Expires: Sun, 01 Apr 2012 03:21:06 GMT Date: Sun, 01 Apr 2012 03:21:02 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
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2012年4月1日(日)付

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避難区域再編―住民の意向を大切に

福島第一原発の事故で避難指示が出ている11市町村のうち、南相馬、田村両市と川内村で避難区域の再編が決まった。新たな区域は、(1)年間の放射線量が20ミリシーベルト以下の[記事全文]

特捜部長有罪―検察の体質も裁かれた

特捜部の威信や自らの地位を守るための犯行であり、刑事司法に悪影響をもたらした――。大阪地検特捜部で起きた証拠改ざん事件で、当時の大坪弘道(ひろみち)部長と佐賀元明(もと[記事全文]

避難区域再編―住民の意向を大切に

 福島第一原発の事故で避難指示が出ている11市町村のうち、南相馬、田村両市と川内村で避難区域の再編が決まった。

 新たな区域は、(1)年間の放射線量が20ミリシーベルト以下の避難指示解除準備区域(2)20〜50ミリの居住制限区域(3)50ミリを超える帰還困難区域の三つ。

 放射線量を基準にしつつも、区域の指定は、国と自治体が協議して決める仕組みだ。

 早期の帰還を目指す避難指示解除準備区域では、まず住民の一時帰宅や工場などの事業再開が認められる。避難をしいられてきた住民にとって、事故から1年過ぎ、やっと復旧・復興への入り口に立ったといえる。

 ただ、実際に避難指示の解除にこぎつけ、以前のように自宅で暮らせるようになるまでには課題が山積している。

 除染、放射線量のきめ細かいチェック、傷んだ住宅の補修、上下水道などのライフラインの復旧、学校や病院をはじめとする生活基盤の整備……。

 事故に伴う損害賠償で積み残しになっている不動産などの損害算定と支払いを急ぐことや、雇用の場を確保することも欠かせない。

 避難中の住民が解除後にそろって戻れば、コミュニティーは維持しやすい。しかし、放射線への懸念は人によって差が大きい。特に妊婦や子どものいる家庭では心配する声が強い。

 自治体や政府は、こうした人たちの意向も大切にしてもらいたい。避難を続けたり、新たな土地に移ったりする人もしっかり支える必要がある。

 自宅に戻れない期間は、居住制限区域で数年間、帰還困難区域ではさらに長期に及ぶ。

 今回の3自治体で、帰還困難区域が設定されたのは南相馬市だけだった。その区域の大半は山林で、住民は1世帯2人にとどまった。

 原発に近い自治体では、もっと多くの住民の家が帰還困難区域になるのが確実だ。

 原発がある大熊町は、放射線量で判断すると住民の大半があてはまる。区域指定で町が分断されることを避けるため、町全体を帰還困難区域にするよう、国に要望するという。

 コミュニティーを保つため、町ごと他の地域へ移る「仮の町」づくりや、個人で他の土地に移る人への十分な賠償など、より重い課題が横たわる。

 区域再編は、今後の長い取り組みの第一歩にすぎない。事故を起こした東京電力、住民と日々向き合う自治体、その自治体を支える国。3者がしっかり連携し、責任を果たしてほしい。

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特捜部長有罪―検察の体質も裁かれた

 特捜部の威信や自らの地位を守るための犯行であり、刑事司法に悪影響をもたらした――。

 大阪地検特捜部で起きた証拠改ざん事件で、当時の大坪弘道(ひろみち)部長と佐賀元明(もとあき)副部長に対し、大阪地裁は懲役1年6カ月執行猶予3年の判決を言い渡した。その際の裁判所の指摘である。

 巨悪を暴くはずの特捜検察の組織ぐるみの犯罪であり、それを身内の最高検が摘発するという例を見ない不祥事だった。

 判決によると、厚生労働省の村木厚子さんの無罪が確定した郵便不正事件で、部長らは主任検事が証拠を検察に有利なように書き換えたのを知りながら、その事実を隠していた。それが犯人隠避の罪に問われた。

 証拠改ざんの疑惑が表面化する発端は、村木さんの初公判だった。問題の証拠が検察の主張と矛盾することを弁護側が指摘したのだ。

 その直後に改ざん疑惑は副部長に伝わり、部長にも報告された。しかし証拠に手をつけたことを知りながら、それを解明することなく公判を続けた。

 立ち止まれる機会は幾度かあった。だが、捜査と公判にかかわったほかの検事らも目をつぶってしまった。

 改ざんがわかった時点で誠実に対応していれば、村木さんの無実はもっと早く証明されたはずだ。

 この事件を検証した最高検が、報告書で「引き返す勇気」の大切さを説いたのは、そうした反省からだった。

 一方で最高検は、部長が村木さんの摘発を強く求め、捜査に消極的な意見を嫌ったことが改ざん事件の背景にあると指摘してきた。

 だが、個人の資質のせいにして済ませられる話ではない。問題は検察の体質そのものにもあったのではないか。

 不都合な証拠に目をくれず、あらかじめ描いた構図に沿って捜査を進め、否認しても聴く耳をもたない。村木さんの冤罪(えんざい)を生んだ背景には、そんな捜査手法があった。

 判決は量刑を述べる中で「検察組織の病弊ともいうべき特捜部の体質が生んだ犯行」と指摘して、執行猶予をつけた理由にあげた。

 検察の体質そのものが裁かれたと受け止めるべきだ。大阪だけの話ではない。

 最高検は再発防止策として、内部監査や決裁体制を強化し、取り調べの録音・録画の範囲拡大などを打ち出している。

 そうした改革を実質の伴うものにするしか、国民の信頼を取り戻すことはできない。

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