介護福祉士や看護師を目指すインドネシアやフィリピンの若者たちの国家試験結果が発表された。依然として試験は狭き門だ。果敢に挑む若者たちを受け入れる制度に早く見直すべきだ。
「合格と知り、すぐ家族に電話した。でも落ちた友人たちのことを思うとあまりうれしくない」
介護福祉士試験に合格したインドネシアの男性(30)は合格者の気持ちをこう代弁する。
介護士試験はインドネシアとフィリピン合わせて九十五人が受けて三十六人が合格した。看護師試験は両国の四百十五人が受け、四十七人が合格した。
若者たちの受け入れは、経済連携協定(EPA)の一環で二〇〇八年から始まった。これまで約千四百人が来日、医療や介護現場で働きながら試験に挑戦してきた。
介護士は原則四年、看護師は三年以内に合格しないと帰国しなければならないが、試験で日本語の壁が問題になってきた。
政府は日本語研修の充実や試験問題の用語に英語訳をつけるなど改善に取り組んできた。
合格率は、今回初挑戦となった介護士は38%だった。四回目の看護師は11%で、昨年の4%より上昇した。改善は一定の効果があったといえる。
だが、日本人を含む全体の合格率は介護士が約六割、看護師は約九割になる。来日する若者の多くは、母国では看護師資格を持つことを考えると合格率は高くない。
政府は来年の試験からは全ての漢字にルビを振ったり、試験時間の延長などを検討している。まだ制度に改善の余地はある。
EPAでは外国人にも日本人と同じ額以上の賃金を払う取り決めがある。日本人も含め介護・看護職場の賃金を下げさせないためにもこのルールの監視にも目配りすべきだ。
ただ、改善策は批判を受けると小出しにされ、結果として後手に回っている。外国人を積極的に受け入れる姿勢にはみえない。
高齢化は中国、韓国などにも到来する。近く「老いるアジア」の時代を迎え、介護や看護人材の奪い合いが起こるかもしれない。この視点も忘れずにEPAを育てていくことが必要だ。
介護士に合格したインドネシアの女性(26)は「私も一緒に来た友人も日本の技術、文化が好き。その思いをなくさないように日本で介護の仕事をしたい」と話した。その気持ちに沿う制度への見直しこそが求められている。
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