HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 30 Mar 2012 20:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:原発と教科書 考える材料を十分に:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

原発と教科書 考える材料を十分に

 人の生き方やものの見方を変えるような前代未聞の原発事故をどう学ぶのか。先生も生徒も共に悩み、教え合うしかあるまい。そのための材料を教科書にはたっぷりと盛り込んでおかなくては。

 来春から高校で使われる教科書には原発事故を取り上げたものも目立った。社会や理科、家庭、美術など教科を超えて十六冊が書き込み、検定に合格した。

 現代社会の教科書の一つは、日本での大震災と原発事故が世界の原子力政策の見直しを迫っていると踏み込んだ。併せて「私たちの生活のあり方をも問うものとなっている」と記した。

 原発の仕組みの図解を載せ、事故について「複数の炉心冷却機能がすべて失われて炉心溶融が起き、原子炉内の放射性物質が外部に放出された」と詳しく説明した物理の教科書も登場した。

 原発の安全神話は崩れた。誰しも史上最悪の深刻さを肌身で感じ取り、脱原発依存の意識も急速に高まった。その変化に反応し、原発の利点のみならずリスクに言及した教科書を評価したい。

 検定の申請は事故発生からほどない昨年五〜六月に締め切られた。原因や影響の全体像が判然とせず、記述を見送った教科書会社も多い。検定意見を恐れ、二の足を踏んだと見る向きもある。

 とはいえ、これからも原発をめぐる大きな動きが相次ぐ。政府や国会による事故調査の結果が出る。エネルギー政策が軌道修正される。福島県の除染が進み、復興が本格化する。

 今秋まで中身は訂正できる。原子力が抱える問題は多岐にわたる。なるべく多くの教科書にさまざまな視点から考えさせる材料をふんだんに盛り込んでほしい。

 先生にとっても手探りの授業になる。一方的に知識や理論を伝えるのではなく、生徒と共に議論を重ね、互いに教訓を学び合う。いわば師弟の立場にとらわれないような教育が試されるだろう。

 一九五〇年代に原子の火がともって以来、原発は国策として進められた。米国スリーマイル島原発や旧ソ連チェルノブイリ原発の重大事故があっても、原発の安全性を疑問視するような記述は検定のやり玉に挙げられた。

 領土や歴史、自衛隊と同じように政治的思惑で検定が左右される事態は許してはなるまい。広範囲に及ぶ放射能汚染、故郷を追われた大勢の住民、電気を大量に消費する社会…。厳然たる事実に基づく教科書づくりが大切だ。

 

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