ソウルで開かれた第二回核安全保障サミットは、テロリストへの核物質流出を防ぐため国際協力を強めることで合意した。核テロ対策は核軍縮・不拡散とともに世界全体で取り組む緊急課題である。
サミットは共同声明を採択し、核物質防護条約の改正案を二〇一四年までにまとめると合意した。各国が協力して核物質輸送の保安を一層高め、核物質の出所を突き止める鑑識も向上させる。
議長国・韓国の李明博大統領は「核物質の管理は国家の責任だが、テロは国境を越える」と深刻さを訴えた。
核テロには多様な形が予想される。テロ集団が核兵器そのもの、あるいは原料となる物質を盗む。原子力発電所など核関連施設の破壊を試みる。兵器化する技術はなくとも、プルトニウムなどを飛散させて放射能汚染を引き起こす−。
声明では「悪意のある非国家主体」という表現だったが、これにはテロ集団だけでなく、核の技術や物質を取引する「核の闇市場」も含まれる。
パキスタンのカーン博士を中心とし、技術者や軍、情報当局者が絡んだネットワークが発覚した。国際原子力機関(IAEA)などの調査で、北朝鮮とイランがウラン濃縮技術や関連機材を闇市場から得ていた疑いが強まった。核の闇市場を徹底的に監視し、摘発することが必要だ。
声明は核兵器に転用できる高濃縮ウラン(HEU)の使用を最大限減らすことも盛り込んだ。
二年前の第一回サミット以降、ウクライナやアルゼンチンなど八カ国が原発内などに保管する四百八十キロのHEUを廃棄または返還した。今回のサミットを受けて、各国はさらに多量のHEUを廃棄するか、低濃縮ウランに転換する公約を発表する見通しだ。
今回の会合では福島第一原発事故を契機に、テロなど事件に対する保安と原発の事故防止を並行して考える重要さが確認された。
野田佳彦首相は福島事故について「炉心損傷に至る過酷事故を想定した準備が不足していた」と説明した。津波によって非常用電源が失われたが、万が一、テロリストが原発内の電源を破壊すれば同様の深刻な事態が起こりうる。
野田首相は国会審議を理由にソウル滞在が短く、他国首脳との会談もなかった。福島第一の教訓が五十余カ国の代表に十分伝わったかどうか。外交の好機を逃す結果になった。
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