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元関脇の鶴ケ嶺(つるがみね)の名を、相撲好きのご高齢なら懐かしく思い出されようか。技能賞を歴代最多の10回。朴訥(ぼくとつ)と潔さにファンは多く、直木賞作家の安藤鶴夫は「勝って、いばったり、負けて、ひくつにみえたりしたことが、ただのいちどもない」と惚(ほ)れ込んだ▼その名力士から「鶴」の一字をもらった新大関の鶴竜が誕生した。モンゴルから来たやせっぽちの少年を、鶴ケ嶺の次男、元関脇逆鉾の井筒親方が手塩にかけた。入門から62場所での大関は外国人では最も遅い▼来日当時は体重が65キロしかなく、親方は「床山にでもするか」と思ったそうだ。いま148キロ。「お客様に喜んでもらえるような相撲が取れるよう努力します」。「こつこつ」が口癖という人らしい、飾らぬ昇進の口上がいい▼とはいえ大関はこれで6人になる。史上初のことで、「ゴロゴロ」だの「ぞろぞろ」だのと皮肉も聞こえてくる。〈クンロクがしょげてた頃が嘘(うそ)のよう〉と川柳欄にあった。ひとけたの勝ち星に甘んじ、毎度横綱の引き立て役では情けない▼〈相撲取には何処(どこ)ようて惚れた 稽古帰りの乱れ髪〉と都々逸に唄(うた)う。そんな色気や、春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)とした風情は、角界でしばらく翳(かげ)っていた。だが八百長問題で2年ぶりの春場所は9度の満員御礼にわいた。人気回復の兆しだろうか▼大関の活躍がカギとなろう。「六雄」として競い、誰が抜け出すか。危機の日々を独り引っ張ってきた白鵬に、そろそろ並ぶ人が出てほしい。名(迷)大関で終わるなかれ。