HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 28 Mar 2012 02:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:原発事故の賠償 被害救済の法律を早く:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

原発事故の賠償 被害救済の法律を早く

 東京電力福島第一原発周辺の避難区域の再編に備え、国は新たな賠償指針を決めた。事故の収束が見通せず、東電と被災者との交渉に多くを委ねた形だ。国の責任で被害救済を担保する法律が要る。

 福島県内の警戒区域や計画的避難区域は年間の放射線量に応じて近く三つに見直される。広野町や川内村はすでに元の役場で業務を再開し、避難している住民に戻るよう促している。

 帰郷に望みをつなぐのか、思い切ってよそに移り住むのか。重大な岐路に立たされる被災者が一気に増えるだろう。

 国の原子力損害賠償紛争審査会は、一人月額十万円の慰謝料を柱とする指針を作った。

 長い間戻れそうにない「帰還困難区域」では五年分の六百万円をまとめて支払う。不動産は事故前の価値の全額を賠償する。一時帰宅はできる「居住制限区域」では月払いを目安とし、二年分の二百四十万円の一括払いも選べる。

 生活環境の回復が早く見込める「避難指示解除準備区域」では月払いだ。広野町や川内村のように昨年九月まで「緊急時避難準備区域」だった場所は今年八月末で慰謝料の支払いを打ち切る。

 指針は賠償を速やかに進める上での最低基準だ。しかし、いくつもの課題を度外視して行政の都合を優先させた印象が拭えない。

 機械的に線引きされれば地域に亀裂が入りかねない。避難を続ける人や移住する人、帰還する人とで賠償に格差が生じる恐れもある。事故は収まっておらず、不測の事態も否定できないし、放射能への不安は人によって異なる。

 収入の道を絶たれた人にいつまで賠償するか。自主避難している人にどこまで賠償するか。東電のさじ加減に翻弄(ほんろう)されるだろう。多様な被災者に一律の救済基準を当てはめる発想では限界だ。

 このままでは立場の弱い被災者が一方的に不利益を被りかねない。国が前面に立ち、事故の推移をにらみつつ生活の再建を後押しする法的枠組みが欠かせない。

 与野党は足並みをそろえ、被災者支援の法律作りを急ぐべきだ。福島県内に限らず一定以上の被曝(ひばく)線量がある地域を網羅し、住まいの確保や雇用の援助、健康管理などを国が一元的に保障する仕組みが望ましい。

 放射能の影響を受けやすい子どもや妊婦、賠償交渉能力に乏しい障害者や高齢者を守る視点も大切だ。支出された国費を東電が弁償すべきなのは言うまでもない。

 

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