仮設住宅で暮らしている被災者の書いた絵手紙を見る機会があった。十円硬貨を描いた絵には、こんな言葉が添えられていた。<じぬ(お金)ねくてひでがったぁ んでも、わらす(子ども)の笑顔にはげまさいだぁ…>▼イカの一夜干しの絵には、<ゆっくりと無理をしないで歩いていく ときどき後ずさりしながら 千年に一度のすごい体験をしたのだから>、フランスから届いた支援物資のスニーカーの絵には、<復興の第一歩>とあった▼福島第一原発に近い福島県富岡町に住んでいた女性が描いたのは小さなひな人形。一時帰宅した際、ポケットに入れて持ち帰った。原発事故でちりぢりになった絵手紙仲間は昨年十月、福島市内で再会できたそうだ▼宮城県石巻市の大規模な仮設住宅では、絵手紙教室が開催されている。最初、下を向いていた人も回を重ねるうちに少しずつ笑顔が戻ってきたという▼「一杯の水が人を生き返らせるように、一通の手紙が人を生き返らせる」と語るのは絵手紙の創始者の小池邦夫さん。描く人も、受け取る人もかじかんだ心が解けてくるようだ▼<寒さにふるえた者ほど太陽の暖かさを感じる。人生の悩みをくぐった者ほど生命の尊さを知る>(ホイットマン)。詩人でなくても、明るい言葉は人を勇気づける。<みなさん さんちゅうべろまっちょ いぎなり元気になったよー>