HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19687 Content-Type: text/html ETag: "a63430-477c-ac712b00" Cache-Control: max-age=2 Expires: Wed, 28 Mar 2012 02:21:13 GMT Date: Wed, 28 Mar 2012 02:21:11 GMT Connection: close
|
「海へ小便したって海の水は小便にはなるまい」と勝海舟が談話集「氷川清話」で述べている。公害の原点とされる足尾銅山鉱毒事件について、人間の素朴な営みなら天地(あめつち)を損なうことはないのだが、との意味で例えたものだ▼しかし文明が発達すれば話は違う。勝は鉱毒事件を「文明の大仕掛けで山を掘りながら、その他の仕掛けはこれに伴わぬ……元が間違ってる」と喝破した。あらゆる文明災害を射抜く洞察だろう。人間は海を汚し、空を汚し、そして放射能をまき散らしている▼きのうに続いて原発の話になるが、福井県の大飯原発の再稼働をめぐり、隣り合う滋賀県の嘉田(かだ)由紀子知事に共感する人は多いのではないか。地元同意の「地元」に滋賀を入れたくない政府や関電に、「行政上の境はあっても大気はつながっている」と猛反論している▼「水源を預かる責任」も強調する。琵琶湖は関西の1400万人の水をまかなう。最も近い原発から県境まで13キロしかない。ひとたび事故が起きれば京阪神は干上がってしまう▼原発という文明の大仕掛けを中心に、目に見えない同心円が存在している。地図上でコンパスを回せば、遠くに思えても直線距離は意外に近い。狭い国土は津々浦々が「地元」と言って過言ではない▼〈真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし〉。これは鉱毒事件を告発し、民衆の先頭で闘った田中正造が言った。勝海舟の卓見と見事に響き合う。教えられることが多い。