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「核のない世界」をめざすと明言した歴史的な「プラハ演説」から約3年。米国のオバマ大統領が今度は、ソウルでの演説で、遠大な目標に向けた新たなステップを示した。戦略核のさら[記事全文]
いやはや、ここまで日本外交の「不在」ぶりを目の当たりにすると、残念を通り越して空しくなる。おととい、核保安サミット出席のため、各国の首脳がソウルに集った。オバマ米大統領[記事全文]
「核のない世界」をめざすと明言した歴史的な「プラハ演説」から約3年。米国のオバマ大統領が今度は、ソウルでの演説で、遠大な目標に向けた新たなステップを示した。
戦略核のさらなる削減交渉をロシアと始めるほか、これまで条約による規制がなかった戦術核の削減にものぞむ考えを示した。核戦力強化を進める中国の軍縮参加も促した。
新興国の台頭、イスラム世界の変動などで世界の安全保障環境は複雑化している。オバマ構想の道のりは今後も平らではないだろう。
だが、核抑止に頼る安全保障は破滅と背中合わせだ。
リスクを直視して、核に頼らぬ平和と安定へと移行してゆく時機を逸すると、やがて誰の手にも負えなくなる危険がある。
それを避ける道しるべとして「プラハ演説」と同様、「ソウル演説」を歓迎する。
戦略核を制限する現在の米ロ条約では、配備核弾頭は1550発が上限だ。米政府内では、1千発以下、場合によっては300発にまで減らす案も検討されているという。日本などの同盟国と協議しながら、安全保障に役立つ軍備管理を速やかに進めてもらいたい。
ロシアは、通常戦力で米欧中心の北大西洋条約機構(NATO)に劣る。対抗して重視するのが、戦略核より飛距離が短く欧州が標的の戦術核だ。これを減らすには、NATOとロシアで戦術核、通常戦力を含めた総合的な軍縮協議が必要だ。
5月に予定されている米ロ首脳会談やNATO首脳会談で、こうした方向に踏み出す必要がある。その試みは、冷戦後も残ってきた冷戦構造からの脱却への引き金ともなりうる。
オバマ氏はソウルでの核保安サミットにあわせて演説した。北朝鮮の核・ミサイル問題、イランの核開発問題への対応を迫られている時期でもある。
核テロ防止や不拡散で国際協力を広めるには、最強の保有国である米国が思い切った核減らしを先導することが大切だ。
米ロが大幅核軍縮に進むとなると、核超大国の軍縮が先決としてきた中国も、自分に関係ないと決め込んではいられない。
財政赤字に悩む米欧諸国が国防予算を縮小せざるを得ない時代に、中国の核戦力強化を見過ごすわけにはいかない。
米ロ、欧州で軍備管理による平和と安全の基盤を固める。同時に東アジアでも軍備管理を地域安定化に生かす。共存共栄のためのグローバルな外交が、一段と重要度を増している。
いやはや、ここまで日本外交の「不在」ぶりを目の当たりにすると、残念を通り越して空しくなる。
おととい、核保安サミット出席のため、各国の首脳がソウルに集った。オバマ米大統領、胡錦濤・中国国家主席、メドベージェフ・ロシア大統領――。
李明博・韓国大統領らとの個別会談で旧交を温めあい、北朝鮮の「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射について、懸念を表明した。
胡主席は「朝鮮半島の緊張緩和に逆らう行為を望まない」と踏み込み、メドベージェフ大統領は「国連安保理決議違反だ」と明確に指摘した。
各国の協調で、かつてない北朝鮮包囲網が敷かれつつある。北朝鮮の打ち上げに、外交力で圧力をかけたことは確かだ。
そのころ、野田首相は国会にいた。午前9時から午後5時まで、参院予算委員会で与野党議員の質問に答えていた。ソウルに向かったのは夜になってからだった。
首相はきのう、57の国や国際機関が参加した席で、福島第一原発の事故への取り組みなどを説明し、イランや北朝鮮の核開発への憂慮を表明した。
だが、オバマ大統領ら米中韓ロなど各国首脳と言葉を交わしたのは、会合の合間の立ち話だけだった。
午後には、あわただしく帰国した。夜に予定されていた消費増税法案をめぐる民主党の会議に備えるためだ。
各国の外交力と、内向きな日本――。この違いは何なのだ。
もともと、野田首相は核サミットの主人公のひとりになって当然だったはずだ。
日本は、これだけの原発事故を経験しているのだ。世界と共有すべき教訓も、ともに解決していくべき課題も山ほどある。北朝鮮のミサイルに対しては、最も切迫した脅威を受ける国ではないか。
それなのに、首脳たちとひざ詰めで話し合う機会を、みすみす逃してしまった。
野田政権は参院では少数与党であり、新年度予算を早く成立させるには、野党の国会出席要求をのまざるを得ない事情があるのはわかる。
だが、それにしてもである。今回の核サミットに、政府・与党が熱意を持っていれば、国会審議を丸2日間休んで、ソウルに飛ぶこともできたはずだ。
毎年、首相が代わる日本の国際社会での存在感は小さくなるばかりだ。それだけに、隣国での晴れ舞台を活用できない日本外交が、何とも歯がゆい。