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天声人語

天声人語のバックナンバー

2012年3月27日(火)付

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 様々にある引退の中で最も潔いのはお相撲さんだろうか。場所中でもすぱりと辞める。だが勝負の世界ならずとも、重責を担った人の引退表明は重い。撤回は気恥ずかしいはずだが、さてこの人はどうか▼政府の原子力安全委員長、班目(まだらめ)春樹氏の引退表明がぐらついている。「精神的に限界」だと今月末での辞意を明かしたが、その後、「パッと本音を言ったが、他の委員の慰留を受けた。国会同意人事でもあり……」と後退した▼新組織の原子力規制庁が4月1日に発足し、安全委は廃止されるはずだった。だが法案が審議入りできず、組織替えの日程はめどが立たない。それを知りつつ辞意を表明したのだから、かなりお疲れには違いない▼班目さんは震災後の官邸の「主役」の一人だった。当時の菅首相に「起きない」と断言した原発の水素爆発が起きた。首相から「俺の相談相手はほかにいないのか」と酷評されている。苦い日々だったろう▼委員会は廃止を控え、委員長は先に辞意表明。それでも先週は、福井県の大飯原発の再稼働に向けた国の審査を認めた。審査をした原子力安全・保安院も廃止の予定だ。つまり安全神話を作り上げてきた旧弊まみれの組織が、再稼働の歯車を回している図になる▼東京電力の原発が昨日で全部止まり、残る稼働中は北海道の1基になった。このままゼロにするか再稼働か、軽い分かれ道ではない。稼働ゼロの体験を確かな一里塚にしたい。関係者は引退するが、子らの将来は続いていく。

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