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野田政権が原発の再稼働に踏み切ろうとしている。東京電力の柏崎刈羽原発6号機が定期検査に入り、全国で稼働しているのは、北海道電力の泊3号機1基になった。それも5月5日に止[記事全文]
政府が、13年度に採用する国家公務員の数を大幅に絞る。岡田克也副総理が「これまでを大幅に上回る抑制」を明言したのを受け、各省ごとの採用数の折衝が大詰めを迎えている。[記事全文]
野田政権が原発の再稼働に踏み切ろうとしている。
東京電力の柏崎刈羽原発6号機が定期検査に入り、全国で稼働しているのは、北海道電力の泊3号機1基になった。それも5月5日に止まる予定だ。
「稼働原発ゼロ時代」に向かうなか、原子力安全委員会は関西電力の大飯3、4号機(福井県)について「ストレステストの1次評価は妥当」と認めた。
これを受けて、野田首相と経済産業相ら関係3閣僚が「稼働しても問題はない」と判断し、地元の理解を得る段取りを考えている。
しかし、1次テストは地震や津波に対する原子炉の余裕度を机上でチェックするものにすぎない。
なぜ、福島第一原発で事故が起き、被害の拡大防止に失敗したのか。その詳しい検証は進行中であり、新たな安全基準作りもまだ道半ばだ。
全国の原発では、電源喪失に備えた短期的な対策を講じた程度だ。福島事故で作業員が立てこもった頑丈な免震重要棟も、大飯をはじめ、多くの原発には備わっていない。
安全委自ら、「1次評価だけでは安全性を評価するには不十分」と位置づけているのに、なぜ政治判断を急ぐのか。
首相らが夏の電力不足を心配しているのは言うまでもない。その懸念はわかる。
であれば、まずは電力需給を精査しなければならない。
需要面では、電力使用が前年実績を下回ったら料金を割り引いたり、ピーク時の料金は高くしたりする制度を広げる。いざという時に電力の使用を制限する代わりに、料金を低く抑えている大口顧客との「需給調整契約」を徹底する。
供給面では、企業が持つ自家発電をもっと活用する。各電力会社の送電線を結ぶ連系線を積極的に使い、広域で電力をやりくりする。
こうした対策を講じた場合、本当にどの程度、電力が足りないのか。そのシミュレーションを明らかにするのが、再稼働を判断するための大前提だ。
全国の原発54基のうち53基が停止している背景には、「原発を減らしたい」という多くの人の意思がある。
一方で、電力業界には「大飯をきっかけに順次、原発を再稼働させたい」という思惑が透けてみえる。
野田政権は軸足をどこに置くのか。首相が脱原発依存への大きな道筋を語らないまま、原発の再稼働に動いても、世論の支持は得られない。
政府が、13年度に採用する国家公務員の数を大幅に絞る。
岡田克也副総理が「これまでを大幅に上回る抑制」を明言したのを受け、各省ごとの採用数の折衝が大詰めを迎えている。
政権交代前の09年度に比べ、11年度分は4割弱減らした。それ以上の削減幅をめざす。
消費増税への理解を得るために、「官が身を切る」という姿勢を示したいのだろう。国家公務員の人件費2割削減という民主党の公約の実現も意識していることは理解する。
だが、大幅な採用抑制は弊害が大きすぎる。
なにより、厳しい雇用環境にある若者に、政府が率先して門戸を閉ざしていいはずがない。海上保安官や刑務官ら現場の要員が不足する恐れもある。こうした弊害を避けながら、人件費を抑える策を練るべきだ。
着目すべきは、採用抑制が世代間の仕事の奪い合いの側面を持っていることだ。
民主党政権が天下りのあっせんを禁止したことで、定年前の勧奨退職は激減している。勤続20年以上の行政職の場合、05年度の勧奨退職は2千人を超えていたが、10年度には400人余りにまで減った。
この結果、定年まで働こうとする国家公務員が増えている。
一方で13年度からは、年金の支給開始年齢が段階的に上がるので、定年後の「再任用」が増えていくのは確実だ。
ベテラン職員がとどまるぶん、若者の採用を減らすのは、いかにも安易ではないか。
もっと幅広い年代で人件費を分かち合い、一定程度の採用数を確保することで、組織の活力を維持すべきだ。
具体策は、すでに指摘されてきた。たとえば、職種や働き方に応じて、給与や昇進にメリハリをつける。人事院が「民間より高い」と指摘する退職金を引き下げる。給与上昇のカーブを見直し、子育てを終えた世代への配分を薄くする。
働き方も変えよう。
そもそも年齢とともに手厚く遇される仕組みは、新卒一括採用・終身雇用の慣行と一体のものだ。経済成長の時代には成り立ったが、いまは「若者排除」につながりやすい。
公務と民間、役所と役所の垣根を低くして、柔軟な人員配置を可能にすべきだ。民間の専門家を幹部公務員に登用したり、若手官僚に民間で経験を積ませたりする。退職金を積みまして希望退職を促す制度も整える。
こうした対策を徹底しないままで採用抑制に走る政府の対応は、あまりに乱暴すぎる。