自らが彫った象牙の乙女像に恋をしたキプロス島のピグマリオン王は、生きた女性に変え、妻にしたいと熱烈に祈った。女神アフロディーテが願いを聞き入れ、生命を吹き込む▼こんなギリシャ神話に由来する「ピグマリオン効果」と呼ばれる心理学用語がある。教師が生徒に期待する態度が、子どもの学習意欲に大きな影響を与えるという説だ▼大人でも、期待され、ほめられれば元気が出る。勢いづいて思いがけない発想が生まれる気もする。子どものやる気を引き出すのは、まずは期待していると態度で示すことなのだろう▼国際的な調査で「自分がダメな人間だと思う」と答えた高校生の割合は、米国の三倍、中国の五倍だった。自尊感情は、親からどんな言葉を受けて育ったかにも大きく左右されるようだ。自己肯定感が十分でなければ、子どもは安心して前に進めない▼小学校の教師を二十三年間務めた親野智可等さんは自著『今すぐ!ほめ上手な親になれる本』で子どもをほめない親は、子どもを伸ばすことはできないと断言する。「日の光が当たらないところで植物が育たないのと同じです」と▼マイナスイメージの言葉を多く浴びている子どもは、自分に自信が持てないという。言葉が持つ暴力性に気付いてほしいと、親野さんはいう。この春休み、子どものいい面をたくさん見つけて、ほめてみませんか。