HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 25 Mar 2012 02:21:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 若者に働く喜びを:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 若者に働く喜びを

 景気に明るさが出てきましたが、雇用情勢は全体としてまだ冬の光景が続いています。とくに非正規雇用労働者の待遇改善と若者対策が急がれます。

 株価と円相場が好転し今春卒業の学生の就職率も上昇が見込まれるなど、経済全体に明るさが広がっています。一方、期待された春闘での賃上げは今年も不発の公算が大きく、一月の完全失業率(季節調整値)は前月比0・1ポイント上昇して4・6%に悪化するなど雇用はスッキリしません。とくに失業率は十五〜二十四歳が9・5%、二十五〜三十四歳も5・7%と若年層の悪さが際立っています。

◆非正規が増える理由

 雇用期間が三カ月〜三年などと短く、賃金も低い非正規労働者の増加も大きな問題です。

 総務省の調査では二〇一一年平均で非正規労働者は約千七百三十三万人に達し、雇用者全体に占める割合は35・2%と二年連続で過去最高となりました。一九八五年は16・2%でしたから、四半世紀余りで二倍以上になりました。

 年齢別に見ると十五〜三十四歳の若年層の割合が高い。大学や高校などを卒業後、正社員として働ける会社がなかったためパートや派遣社員など非正規で働く−という若者が多いのです。

 企業側に強いニーズがありました。冷戦構造の崩壊で経済のグローバル化が進み正社員よりも賃金の安い派遣や契約、パートなど非正規雇用を積極的に拡大しコスト削減に努めたのです。

 産業界の要請を受けた政府も労働規制を緩和しました。労働者派遣法の度重なる改正はその典型です。本来は通訳やソフトウエア開発など専門的な業務だけでしたが、その後製造業の派遣も解禁。そこへ〇八年秋にリーマン・ショックが襲い、派遣切りで大量の失職者が出て社会問題化したことは、まだ記憶に新しいところです。

◆長期雇用は企業責任

 非正規雇用すべてが悪いということではありません。若者でも女性でも「組織に縛られたくない」とか「自分の専門技術が生かせる」などの理由で、パートや派遣社員になる人もいます。

 ただ、一度非正規になるとなかなか正社員になれないという現実があります。最近では中途採用の拡大で改善されてきましたが、フリーターなどから正社員への門は依然、狭いままです。

 賃金の低さは歴然としています。厚生労働省の調査では二十五〜二十九歳の賃金は正社員が二十六万四千円で非正規社員は二十万八千円。これが五十〜五十四歳ではそれぞれ四十一万二千円、二十万六千円と二倍に。そして生涯賃金はかなりの差となります。これでは中間層は広がりません。

 政府は現在、パート労働者の厚生年金加入対象の拡大や五年超の有期雇用は無期雇用へ転換を義務付けるなど、非正規対策を進めています。それらに加えて若者対策を強力に推進すべきです。就職促進策と、就職しても三年以内に中卒者の約七割、高卒者の五割、大卒者の三割が離職するいわゆる“七五三現象”の解消、そしてフリーターの正社員化です。

 現役大学生の就職支援で、ハローワークからジョブサポーターを大学へ派遣する事業が四月にも始まります。国がそこまでやるのか−との声もありますが、この際大学側に奮起を求めます。政府は新産業の育成と学生の大企業志向で生じるミスマッチ防止を進める。産業政策と組み合わせた若者雇用戦略の策定が不可欠です。

 企業は長期雇用の大切さを自覚してほしい。春闘で経営側は「雇用を守ることが最大の社会貢献」と強調しました。それならば非正規を含めた従業員の長期雇用を責任をもって実現すべきです。

 日本企業の強さは、高い技術と人材の厚さにあります。それらは終身雇用と年功賃金など、日本型経営の良さが発揮されていたからです。雇用の安定があって初めて販売や生産現場などでの総合力が生まれるのです。

 連合など組合側は正社員中心の運営を改める時機です。全国の労働組合員数は一千万人を割り込み、推定組織率は18・4%と最低で働く者の代表とは言い難くなっています。時間給の引き上げや正社員への転換制度拡充など非正規の待遇改善を放置すれば、「パートの反乱」あるいは「反組合」運動が起こるかもしれません。

◆未来創る努力も必要

 最後に、正規でも非正規でも若者自身がもうちょっと努力することを求めます。望まなかった企業に入っても四〜五年は我慢する。そこで営業や企画などの経験を積み、余力があれば商業簿記や自動車整備などの資格を取る。大学院に入って経営学修士を目指すのもいい。社会人の先輩の一人として我慢と努力の言葉を贈ります。

 

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