明治期、この国に滞在した外国人には、日本を褒めちぎった文章を残した人が少なくない▼メアリー・フレイザーという女性もそう。手紙の中にこんなことを書いている。<日本の警察官がいかに称賛すべきか…あなたには想像できないでしょう。とにかく、少しでも困ったことがあれば、いつも手近にいて声をかけることができますし、しかも愛想がよいのです>(『英国公使夫人の見た明治日本』)▼少なくとも、この公使夫人が、当時の警察官一般に、困った時は親身になってくれるという強い印象を抱いていたことが分かる。今読むと面映(おもは)ゆいも何も通り越して、空(むな)しい▼長崎県で、男からストーカー被害に遭っていた女性の家族二人が殺害された事件。女性の家族らは<少しでも>どころか困り果て、怯(おび)えていた。なのに、その通報や相談への対応を、千葉など関係先の三県警はたらい回し。結局、悲劇は起きた。それ自体、言語道断だが、さらにあきれる話だ▼女性の家族に、多忙を理由に被害届提出の先送りを求めた千葉県警習志野署が実は直後、慰安旅行をしていたことが明らかに。もし、そのために受理を避けたのなら、もう犯罪的というほかない▼何も称賛される仕事を、というのではない。ただ、困っている人の親身になってほしいだけだ。警察に、当然の警察らしさを求めなくてはならぬのが哀(かな)しい。