米国がイラン原油を輸入する日本など十一カ国に対する制裁除外を発表した。だが、原油高騰が収まるという将来への展望は開けない。日本は二度の石油危機を教訓に省エネに磨きをかけるときだ。
昨年暮れ、米国は核兵器開発疑惑が深まるイランへの圧力を強めるため、イラン中央銀行と取引のある外国金融機関に対し米金融機関とのドル取引を禁じる国内法を成立させた。原油代金決済の資金ルートを断ち切る、いわばイランへの兵糧攻めだ。
しかし、イランは自らの原子力開発計画を平和利用だと反論し、促進姿勢を崩していない。
そうした中、クリントン米国務長官は日本やドイツ、フランス、ギリシャなど十一カ国の金融機関を制裁対象から外すとの声明を発表した。特に東日本大震災後の昨年下半期、日本はイラン原油の輸入を15〜22%減らしたとして「特筆すべき」とまで称賛している。
藤村修官房長官は「歓迎」と応じたが、昨年一月から途絶えている国連安保理常任理事国にドイツを加えた六カ国とイランとの協議は四月再開に向けなお調整中だ。
原油価格はイスラエルによるイラン単独攻撃の可能性などが指摘されるなか、中東ドバイ原油が一バレル=一二〇ドル台に高騰した。米国もガソリンが値上がりし、政権批判が噴出するとされる一ガロン=四ドルを超える事例が相次いでいる。
リーマン・ショック前の水準に回復した株価や雇用に水を差せばオバマ大統領の再選を脅かす。声明は、混乱を回避し自国経済への影響を抑えたいという米国の事情も背景にあるとみるべきだろう。
さらに着目すべきは、ヌアイミ・サウジアラビア石油鉱物資源相が原油高騰を「正当化できない」と増産の用意を明らかにしたことだ。発言には、価格高騰は消費国に省エネを促し原油輸出が減退するという不安が内包されている。
イラン核疑惑は外交による解決が何より優先するが、産油国が神経をとがらせる省エネは脱原発依存に立ち向かう「ポスト福島」にも直結する課題だ。
資源小国の日本は一九七〇年代の石油危機を省エネ技術で乗り切った歴史を忘れるべきでない。
今、一リットルで三十キロ走る低燃費車の生産が注文に追いつけないでいるという。省エネは着実に広がっている。原油高への日本の手だては限られるが、ヌアイミ氏の発言も裏返せば省エネ推進のシグナルであり、攻めの技術革新に突き進む好機と受けとめるべきだ。
この記事を印刷する