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「北窓(きたまど)塞(ふさ)ぐ」と言い、「北窓開く」と言う。それぞれ初冬と仲春(ちゅうしゅん)の季語で、季節風に備えて北向きの窓を閉め切り、春がめぐると開け放つ、という意味合いだ。その窓が今年はなかなか開けられない。昨日も各地で冬のような北風が吹いた▼関東や近畿、東海ではとうとう春一番が吹かずじまいだった。立春から春分までに吹く南風で、気象庁が風速や気温で定義している。名前と裏腹に荒々しく、土ぼこりを巻き上げ、ときに看板など吹き飛ばす。乱暴者の風来坊だが、「来(きた)らず」となればどこか寂しい▼そんな中で昨日、高知の桜(ソメイヨシノ)が開花した。全国で最も早い、待ちかねた便りだ。欧米人がもっぱら季節の盛りを愛(め)でるのに対し、日本人は「さきぶれ」に敏感だとされる。四季の顔だちが際立っているためだろうか▼小欄の隣の「しつもん!ドラえもん」でも「さくら編」が始まった。列島を北上する桜前線は時速約2キロの計算になると、3日前に教わった。幼子(おさなご)の歩みほどの足で日本を染め上げていく▼他にも様々な前線が、この時期に北へ向かう。梅に桃、ウグイスの初鳴き、ツバメの飛来……。モンシロチョウの初見前線は、1匹の蝶(ちょう)が野山をこえて、ひらひらと北上していく幻想が頭に浮かぶ▼今日から空気はぐっと春めくという。球春という日差しも甲子園から注ぐ。「日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を」。石巻工の阿部翔人(しょうと)君の宣誓がよかった。北窓が開いて、風がさっと吹き込んできた。