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天声人語

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2012年3月21日(水)付

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 文芸春秋を創刊した作家の菊池寛は、手相占いは信じたが人相占いは嫌ったようだ。貧乏だった若いころ、占師に手相を見てもらうと将来の栄達を告げられた。それがことごとく当たったらしい。一緒にいた作家の久米正雄も後に的中ぶりに驚いたそうだ▼だが人相の方は、週刊朝日の誌上で観相師に「けちん坊の相」とやられて馬鹿らしくなった。もとより当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦の世界である。ところが昨今、つきあい方を間違えて痛い目に遭う人が増えている▼今に始まったことではなかろうが増加は著しい。国民生活センターによれば、占いや運命鑑定などのトラブルは10年前の2倍を超える。芸能界でも一騒動あり、「占い依存」なる言葉も世に出回っている▼背景には、晴れぬ時代の空気があるという。そういえば、懐かしいスプーン曲げの超能力ブームも、「ノストラダムスの大予言」も、世情騒然となった石油危機のころだった。今年はマヤ文明の暦による「人類滅亡」が話題にのぼる▼菊池寛に話を戻せば、手相見の所では芥川龍之介も一緒だった。だが「諸君も想像するとおり、芥川だけは見て貰(もら)わなかった」と回想していて面白い。「運命は偶然よりも必然である」と書いた人は占いから遠かったようだ▼人生は不可解につき、大なり小なり人は行き詰まるし、生き迷う。占いとの距離はそれぞれだろうが、やはり喜怒哀楽の飾りぐらいが程良(ほどよ)くはないか。尻尾に体が振り回されては、当たるも外れるもない。

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