子ども手当の名称を児童手当に戻すことで民主党と自民、公明両党が合意した。制度名をめぐる対立は、子育て家庭を置き去りにした政争だ。息の長い支援が必要なのに政治不信だけが募った。
政権交代して二年半の間、子ども手当は迷走を続けた。
民主党は社会で子育てを支える理念から、支給に所得制限を設けていなかった。その点を野党が認めず制限を主張して議論は平行線のまま終始した。
昨年は野党側から公債発行特例法案成立の条件に子ども手当の見直しを迫られた。
この間、時限立法で対応し暫定的な制度として不安定な状態が続いた。給付額も定まらなかった。
昨年八月、子ども手当を廃止し所得制限のある従来の児童手当を拡充し復活させることでやっと与野党が合意した。だが、その後もこの手当の名称で対立が続く。
民主党が「子どものための手当」「児童成育手当」「児童のための手当」と名称を提案しては野党が反対してきた。
子ども手当は民主党にとって政権交代を実現させた看板政策だから、名称を変えたくない。
一方、自民、公明にとって政権を奪われた政策である。名称は認めがたく、もとの児童手当にこだわった。
メンツの張り合いで混迷した争いは、恒久制度を決められず子育て家庭を置き去りにした。
そもそも民主党は当初、子ども手当の満額を月二万六千円とアピールした。しかし財源不足で半額支給で始まった。最初から子育て家庭の不信を買った。
子育ては長く続く支援が要る。子育て家庭には支給額の多寡より、ずっと支えるというメッセージこそ大切である。与野党はその期待に応えていない。
今回、名称を児童手当として与野党合意したことで関連法改正案が三月中に成立する見通しだ。だが、対立の火種は残っている。
所得制限を受ける世帯は年少扶養控除の廃止で手取り額が以前より減る。新制度では子ども一人月五千円を支給するが暫定措置だ。手取り額に直結する控除の扱いなど課題を先送りした。まだ安心できる恒久制度になっていない。子育て家庭は依然として不安を感じる。
少子化が進む今、与野党とも子どもの育ちを社会で支える重要性は理解しているはずだ。幼保一体化の関連法案審議も始まる。子どもたちを向いた論議をすべきだ。
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