国の復興交付金の第一次配分額が申請の六割強にとどまり、被災地に不満が募っている。復興庁は「現場主義」を掲げたはずだ。ならば、苦しんでいる自治体をもっと信用して、任せればどうか。
水産加工場が集積していた宮城県気仙沼市の漁港周辺。地盤沈下した一帯には鉄骨とがれきが点在し、満潮時は完全に水没する。そんな中、魚市場の仮さばき場でフカヒレにするネズミザメが水揚げされている。再開した水産加工業者はごく一部。何より周辺のかさ上げが待たれる。
市は復興交付金として用地買収費までを要求したが、配分は測量設計費だけの三億円余。宮城県全体では申請額の57%、千百六十二億円にとどまった。村井嘉浩知事が「復興庁ではなく査定庁だ」と非難した気持ちも分かる。
復興交付金は高台への集団移転や災害公営住宅など国土交通省のほか農林水産、厚生労働、文部科学、環境の計五省にまたがる四十事業が対象。使い勝手が良く、地元負担もゼロというふれこみだった。七県七十八市町村が計三千八百九十九億円を申請し、第一次配分は64%の二千五百九億円。ゼロ回答が十九市町村もあった。
平野達男復興相は「練られていない計画は外した」と説明した。生活と雇用の関連事業を優先する復興庁の方針には賛成だ。ただワンストップ窓口として同庁を頼りにする自治体側にとって、事業の所管省による厳しい査定は想定外だった。満額回答の期待が大きかった分、失望感が深い。
また復興相は手続きの簡素化と認定の迅速化を強調するが、極めて役所的なもの言いだ。手続きうんぬんではない。復興が緒に就くことで被災地がどれだけ安心するかを考えてほしい。人手不足の自治体は、第二次配分へ向けた再申請で要らぬ事務量が増える。
政府・与党は地域主権改革を進めようと一括交付金を導入した。この際、復興交付金も霞が関ではなく自治体の裁量に任せればどうか。復興予算が単年度主義にとらわれる必要もない。気仙沼漁港のかさ上げ完了まで複数年度で予算化すれば、地元の「頑張ろう」という意識は高まるのではないか。従来にはない大胆な政策を求めたい。
地方分権の進展で、国と地方は主従ではなく対等関係となったはずだ。なぜ、復興庁は国側の目線なのか。今からでも遅くはない。現場の人員を増やすなりして、一心同体の姿を見せてほしい。
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