HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 30924 Content-Type: text/html ETag: "bab750-5ca2-c149b200" Cache-Control: max-age=2 Expires: Tue, 20 Mar 2012 00:21:03 GMT Date: Tue, 20 Mar 2012 00:21:01 GMT Connection: close
朝日新聞社説のバックナンバー社説のバックナンバーは、下記の有料サービスでお読みいただけます。 |
パート社員をどのくらい、正社員と同じ年金と健康保険に加入させるのか。野田政権が案を決めた。いまは、週30時間以上働く人が対象だが、20時間以上に広[記事全文]
米軍普天間飛行場の移設反対運動になぞらえて「もう一つの辺野古」ともいわれる沖縄の基地問題がある。本島北部、東村(ひがしそん)高江地区への軍用ヘリコプター着陸帯(ヘリパッ[記事全文]
パート社員をどのくらい、正社員と同じ年金と健康保険に加入させるのか。
野田政権が案を決めた。
いまは、週30時間以上働く人が対象だが、20時間以上に広げる。ただし、従業員数が501人以上▽勤務期間が1年以上▽年収は94万円以上▽学生以外、という制限がついた。
昨年6月の「一体改革成案」が例示した「20時間以上」だけなら、約400万人が加入するはずだった。
ところが、企業側から激しい抵抗にあった。そのままだと、5400億円の負担増になるからだ。商工団体から突き上げられた議員が、できるだけ範囲を狭めようと動いた。
このため、新たな加入者の見通しは45万人に減り、企業の負担額も800億円程度に抑えられることになった。
民主党の政治責任は大きい。単に目標が尻すぼみになっただけではない。
前原誠司政調会長によれば、今回の拡大が始まるのは4年後で、そこから3年以内にさらに対象を広げる。負担増は段階的に進めるということだろう。
であれば、過去の振る舞いを猛省しなければならない。自公政権が10万〜20万人の拡大をめざし、07年に国会に提出した法案を「抜本改革でない」と廃案に追い込んだことである。
拡大幅が不十分とはいえ、実現していれば、今回はさらに拡大できた可能性がある。
民主党のマニフェストにある「新年金制度」も即刻、棚上げにすべきだ。どんな短時間パートも正社員と同じ年金に入れる法案を来年出すという約束は、非現実的であることが分かったはずだ。一体改革の足かせでしかない。
もちろん、今回の拡大が前進なのは間違いない。だが、本当に45万人のパートが加入できるとも限らない。
勤務の時間や期間を短くして、保険料逃れに走る企業も出てくるからだ。その方がライバル企業より有利になる。
これでは、賃金の切り下げ競争を招き、消費を沈滞させる。パートを多く雇っている外食やスーパーにとっては、結果的にマイナスになる。
そんな流れは止めたい。
妙案はないが、まずパート社員を積極的に年金や健康保険に加入させる企業は、そのことを広くアピールしてはどうか。
消費者が、社会的責任を果たす企業を応援するきっかけになるだろう。そんな地道な取り組みから、日本経済の底上げをはかりたい。
米軍普天間飛行場の移設反対運動になぞらえて「もう一つの辺野古」ともいわれる沖縄の基地問題がある。
本島北部、東村(ひがしそん)高江地区への軍用ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐる争いだ。
工事現場に通じる道路で、反対派の住民が座り込んだ。これが妨害に当たるとして、国が2年前に住民を訴えた。
那覇地裁は先週、住民1人に違法な妨害があったと認め、通行の妨害を禁止する判決を言い渡した。住民は控訴の構えだ。
問題をおさらいしてみる。
日米両政府は1996年、米軍が使っている沖縄の北部訓練場の約半分の約4千ヘクタールを返すかわりに、7カ所のヘリパッドを返還されない区域の6カ所へ移すことで合意した。
人口150人余の高江地区は東が太平洋に面し、残る三方に北部訓練場が広がる。
そのため、ヘリパッドはこの地区を囲むような配置になる。最も近い民家とは約400メートルしか離れていない。
高江の人たちは「基地の中に住むのも同然になる」と、区民総会で2度、反対を決議した。訓練場を使う米軍ヘリは今も住宅の上で旋回を繰り返し、騒音がとどろく。ヘリパッドが完成すれば、さらに騒音や墜落の可能性が高まると心配する。
飛行ルートや周辺への騒音対策はどうなるのか。不明な点が多い。新型輸送機オスプレイの配備も取りざたされる。
すぐ近くで接する人たちが不安に思うのは当然だ。
沖縄防衛局は住民が求めた話し合いの場も設けないまま、07年に建設準備に伴う重機や資材の搬入に着手した。これに住民たちが抗議活動を始めた。
工事は進まなくなった。
賛否がある問題で国が住民を訴えたことで、地元の人たちに強い違和感が残った。法律家もそろう政府と違い、住民は交通の便の悪い北部から裁判所へ通うことから負担が重かった。
高江の人たちはやみくもに反対しているわけではない。政府に十分な説明を求めている。
すでに米軍が使っている訓練場内での移設工事とはいえ、訴訟を始める前に、政府から取るべき手段はなかったのか。
日米関係は大切だ。だが、まわりの住民に理解されず、支持されない施設は存在の基盤が弱くなる。それは米国も歓迎しないだろう。
沖縄防衛局は米軍に対するほどの思いやりを、地元の住民にも示すべきだ。誠実に疑問に答え、対策を提案する。今からでもやるべきことがある。