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あの党首討論は、いったい何だったのか。最高裁に「違憲状態」と指摘されている衆議院の一票の格差是正が、まだ進まない。先月末の党首討論で、野田首相は自[記事全文]
ハイブリッド車などハイテク製品の部品に使われる鉱物資源レアアース(希土類)をめぐって、日本と米国、欧州連合(EU)が中国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。レアアースで[記事全文]
あの党首討論は、いったい何だったのか。
最高裁に「違憲状態」と指摘されている衆議院の一票の格差是正が、まだ進まない。
先月末の党首討論で、野田首相は自民党の谷垣総裁からの提案を受け、「違憲状態を脱するのが最優先」と明言した。
まず小選挙区で定数を五つ減らして、格差をただす。新たな選挙区割りを衆院選挙区画定審議会が検討している間に、さらなる定数削減と選挙制度の見直しを決着させると語った。
「違憲状態」判決から1年、各党は格差是正と定数削減、制度改革の三つを同時に決着させようとして、もめ続けてきた。
ようやく両党首が、格差是正を先行させることで一致したのは合理的で意義があった。改革が動き出すかに見えた。
それなのに、である。
党首討論の翌週も、各党協議会は空転した。
民主党はまたも比例代表定数の80議席削減を持ち出し、公明党は選挙制度の抜本改革を求めた。結局、座長の樽床伸二・民主党幹事長代行が各党から個別に意見を聞いて、座長案をつくることになった。
首相も首相である。
その後の国会で「最優先のことを念頭に入れながら、三つの話が成案を得ることに努力しようということ」と答え、格差是正優先の方針をうやむやにした。まったく理解できない。
もちろん、各党の消長に直結する選挙制度を民主、自民両党だけで決めていいわけがない。だからこそ、まず民主党が比例80削減という中小政党の反発が強い案を取り下げるべきだ。
それが、違憲状態の解消に向けた第一歩になると、私たちは考える。
民主党は比例80削減をマニフェストに掲げ、消費増税に向けた「身を切る策」として、一体改革の大綱にも入れている。だから簡単には譲れないという。
だが、ここまでかたくなな態度を見ると、結論を先送りして、あわよくば衆院解散を封じる口実に使う気なのだと勘ぐられても仕方あるまい。
民主、自民両党の「小選挙区5減」をやっても、格差は辛うじて2倍を切るだけだ。その場しのぎに過ぎない。それでも「違憲状態」解消のために、やった方がいい。
同時に、各党が立法府の責務として定数削減と制度改革を急ぐのは当然だ。
その証しとして、首相の諮問機関の選挙制度審議会を立ち上げ、第三者の手で衆参両院を一体的に改革することを求める。
ハイブリッド車などハイテク製品の部品に使われる鉱物資源レアアース(希土類)をめぐって、日本と米国、欧州連合(EU)が中国を世界貿易機関(WTO)に提訴した。
レアアースで世界の供給の9割を握る中国は、環境対策や資源保護を理由に生産や輸出を大幅に規制している。このため、レアアースは品薄となり、価格の高騰を招いている。
その一方で、中国は国内企業への供給を優先しており、これが外国企業への差別を禁じるWTO協定に違反するというのが日米欧の主張だ。
日本が中国をWTOに訴えるのは初めて。最大のレアアース輸入国として受けた影響を考えればやむを得ない。
レアアースで問題になっている輸出規制は、WTO協定上もきちんとした禁止の枠組みが未整備だ。問題が起きたら、紛争解決を通じて処理していかないと、野放しになる恐れがある。世界第2の経済大国・中国が主役とあってはなおさらだ。
似た構図の争いは、すでに中国のレアメタル(希少金属)輸出規制でも生じた。米欧などがWTO提訴し、中国は上訴審まで争って敗れた。これに意を強くして日米欧がレアアース問題で足並みをそろえた。
中国の最高実力者だった故・トウ小平氏(トウは登におおざと)はかつて「中東に石油があるなら、中国にはレアアースがある」と語った。中国政府はレアアースをことさら戦略物資として重視し、これを取引材料に先端技術の移転や企業進出を先進国に迫っている。
しかし、このような姿勢は世界のユーザーを警戒させ、代替となる鉱山や材料の開発、リサイクルを加速させるだけだ。長い目で見れば割に合わないことを中国は学ぶべきだ。
中国が輸出規制の理由にあげる環境保護や資源保護は、必要だろう。ある程度の値上がりは仕方がない。だが、国内企業と外国企業を平等に扱うという自由貿易の精神をないがしろにすることは許されない。
中国が求める先端産業の振興は、ほかのさまざまな方法を組みあわせて多角的に進めるのが筋だ。世界との信頼関係を損ねては、将来に禍根を残すことをわきまえる必要がある。
当面は、日米欧と中国の協議で解決が模索される。日本はWTOとは別に官民で中国に改善を求めてきた。環境対策の支援などで協力の余地は大きい。
協議が不調なら、WTO小委員会(パネル)で本格的な争いに突入する。そうなる前に妥協点を見いだしてほしい。