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消費増税法案に対する民主党の事前審査が始まった。3月中の法案の国会提出に向けた閣議決定のために、欠かせない手続きである。焦点は、党内の最大勢力を率[記事全文]
大阪府警で物証の捏造(ねつぞう)や紛失が相次いで明るみに出た。刑事裁判で立証の柱となる証拠類のずさんな扱いにあぜんとする。福島署の警部は、強盗強姦(ごうかん)事件で遺留[記事全文]
消費増税法案に対する民主党の事前審査が始まった。
3月中の法案の国会提出に向けた閣議決定のために、欠かせない手続きである。
焦点は、党内の最大勢力を率いる小沢一郎元代表ら反対勢力の出方だ。野田政権の根幹をなす政策で、これほどの党内対立があることにあきれるが、堂々と議論すればいい。
いっそのこと、党員資格停止中の小沢氏を招き、存分に意見を開陳してもらったらどうか。
そんな徹底討論をしたうえで、野田首相は公言してきた通りに、法案を粛々と国会に提出すべきだ。
財政の健全化と社会保障の安定財源の確保は、もう先送りできない。事前協議に応じない野党とは国会で渡り合い、妥協点を探っていくしかないのだ。
党内の事前審査は、その与野党論戦の前哨戦にも見える。
法案の付則をめぐり、二つの論点が取りざたされている。
ひとつは、景気の動向次第で増税を停止できる弾力条項の表現をどうするかだ。
政府案が、さまざまな経済指標を総合的に判断するとしているのに対し、党内には「名目3%、実質2%」など、成長率の具体的な目標を盛り込むべきだとの意見がある。
確かに数値を決めて機械的に判断するのは、わかりやすい。だが、要するに「増税できない理由」を探しているだけではないか。増税の先送りは東日本大震災やリーマン・ショック級の深刻な事態に限るべきであり、政府の原案のままでいい。
もう一つの論点は、将来の再増税の道筋を付則に明記するかどうかである。
政府案は、2015年に消費税率を10%に上げたあと、「16年度をめどに必要な法制上の措置を講ずる」としている。
将来の社会保障給付の増大を考えれば、いずれ消費税をさらに引き上げねばならない事態は十分に予想される。
だが今回の増税案にすら、国民の理解が広がらないなか、ここまで財政優先の論理を振りかざす意味がわからない。行革や歳出削減が緩む懸念もある。
野党との妥協の「のりしろ」という意味合いもあろうが、まずは消費税10%の影響を見極めるのが筋だ。
法案は菅政権いらいの党内論議を反映している。いまさら、ちゃぶ台返しは許されない。
野田首相はさきの党首討論で「51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めたら皆で頑張っていく」と述べた。言葉通りの覚悟を示すしかない。
大阪府警で物証の捏造(ねつぞう)や紛失が相次いで明るみに出た。刑事裁判で立証の柱となる証拠類のずさんな扱いにあぜんとする。
福島署の警部は、強盗強姦(ごうかん)事件で遺留品だった可能性のあるたばこの吸い殻が警察の保管場所からなくなったことを知り、自宅近くで拾った吸い殻を証拠に置き換えた。
紛失した吸い殻は唾液(だえき)のDNA鑑定で容疑者を特定する決め手となりうる。一方、別の人物のDNAが検出されれば無罪を明らかにする手だてにもなる。
証拠品の吸い殻といえば昨春にも、紛失が問題になった。
最高裁が審理のやり直しを命じた大阪市平野区の母子殺害事件で、鑑定されることになっていた71本の吸い殻が、保管先の平野署でなくなっていたことが発覚した。
誤って捨てたと警察はいうが、廃棄の経緯は不明のままだ。弁護側は被告の無罪を裏付ける物証と主張していたが、鑑定はできなくなった。
この紛失を受け、府警が証拠品の適正な管理を誓った矢先に福島署の警部は捏造していた。
殺人罪などの時効が撤廃されたことで、証拠品の保管は長期化し、数も増えている。
この際、全国の警察で管理状況を徹底的に調査してもらいたい。署の複数の幹部が目を通し、警察本部が抜き打ちで監査を実施するなど、チェック態勢の強化が求められる。
証拠の捏造は、飲酒運転の取り締まりでも明るみに出た。
泉南署の警部補が、検挙時にアルコール検出値を水増しした容疑で逮捕された。
あらかじめ基準値を超えた測定結果の記録紙を用意し、飲酒運転の検問に使っていたという。犯罪のでっちあげである。
警察庁の片桐裕長官は会見で、一連の証拠捏造について「全容を解明し、再発防止策を徹底する」と決意表明した。
飲酒検問をめぐっては、沖縄県警でも2000年に同様の事件があった。他の地域にも広がっていないか、調べるべきだ。
大阪地裁は先週、大阪市内の放火殺人事件で、無期懲役の判決が確定した被害者の母親らの自白調書の信用性を否定して、再審開始を決めた。
物証を軽んじてきた大阪府警の姿勢は、裁判所が危うさを指摘した自白偏重の捜査と裏表の関係にあるのではないか。
裁判員裁判が定着し、客観証拠の重要性はより増している。そうしたなかで、証拠の捏造などは、司法にとって自殺行為に等しいことを、捜査側は自覚する必要がある。