地震による原発事故への不安を誰もが強め、できれば止めたままにしておきたい−。静岡県で実施した本紙の意識調査の回答。「原発に頼らない国」へ向かうためにも、地元の不安をよく聞きたい。
調査は静岡大と共同で、静岡県民、県内の首長、議員計約二千八百人を対象に実施。防災意識を聞いた。
やがて来る東海地震。その想定震源域に立つ中部電力浜岡原発は、福島第一原発事故後、政府の要請を受け入れて停止したままだ。
調査結果によると、浜岡原発から半径三十キロ圏内の十一市町の首長の中で、再稼働に賛成なのはわずかに一市。原発がある御前崎市長だけだった。
このうち、吉田町は「廃炉」。十キロ圏内の牧之原市は「永久停止」を求めている。吉田町長が廃炉を望む理由は「文明を維持するための道具にするには、リスクがありすぎる」からという。
県民や議員に対する調査でも、それぞれ約八割から九割が原発の停止を支持し、即時撤廃か、漸減を求めている。
中電が福島原発事故後に進める安全対策が「十分」と答えた首長は、一割未満。数字からは、来るべき大地震への不安と原発への危機感、そして電力会社への不信感の高まりが見て取れる。
浜岡原発から広がる危機感と不信の同心円の中心だけが、空白になっている。原発を抱えるまちでは、原発マネーといわれる巨額の交付金や税金、関連産業の雇用を失う目先の不安の方が先に立つ。
再稼働にノーを唱える多くの首長も、一般に原発を利用し続けることについては「どちらかといえば賛成」などと歯切れが悪くなる。自然エネルギーへの転換が必要とは分かっていても、その能力にも不安を感じているからだ。
例えば、福井、石川両県だけで高速増殖炉もんじゅを含む十六基が集中する北陸地方で調査した場合、恐らく同じような傾向を示すのではないか。
東日本大震災を経験し、日本には地震の安全地帯がないと誰もが身に染みた。原発への危機感は共有されてきている。
一年前のことは忘れまい。その上で、原発と未来のエネルギーについて、地元の意見をよく聞くこと。立地地域には原発に代わる収入源、それ以外には、代替エネルギー確保への行程を示すこと。そういう道筋を、この調査は示している。
この記事を印刷する