HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 32921 Content-Type: text/html ETag: "96e791-5ca0-26297f80" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 12 Mar 2012 22:21:07 GMT Date: Mon, 12 Mar 2012 22:21:02 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
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2012年3月13日(火)付

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東電値上げ―燃料費下げる努力は?

経営難の東京電力が、大企業向けに続き、家庭向けの電気料金についても約10%の値上げを申請するという。4月以降に、国に認可を求める方針だ。平均的な家庭で月600円程度の負[記事全文]

会社の規律―経営に社外の目いかせ

会社法の見直し作業が進んでいる。日本の企業統治に対する信頼を高めるのがねらいだ。政府の法制審議会が昨年末に発表した「中間試案」に対する各界への意見照会が終わり、このほど[記事全文]

東電値上げ―燃料費下げる努力は?

 経営難の東京電力が、大企業向けに続き、家庭向けの電気料金についても約10%の値上げを申請するという。

 4月以降に、国に認可を求める方針だ。平均的な家庭で月600円程度の負担増になる。

 値上げの理由は、燃料費だ。原子力発電が止まって、代わりに火力発電の運転が急増した。燃料費は前年に比べ4割増しになっているという。

 費用がかかる分は、一定程度を利用者が負担するのはやむをえまい。

 だが、すべて「しかたない」で済ませていいだろうか。

 燃料の多くは、液化天然ガス(LNG)と石炭だ。なかでもLNGは、日本の輸入量全体の6割が電力向けだ。

 問題は、震災の前から電力会社を中心とした日本勢が、このLNGを「高値買い」し続けていることにある。

 天然ガス市場は今、大転換期を迎えている。シェールガスという岩層に豊富なガスが、各地で採掘可能になった。先行する米国では劇的に値段が下がり、いまや日本の輸入価格の6分の1ほどで流通している。世界のガス市場も低落傾向にある。

 ところが、日本勢が買うLNGは下がらない。原油価格に連動した値決め方式で買い続けているためだ。

 この方式は1970年代の石油危機を機に始まったが、40年たち合理性はとうに薄れた。むしろ、中東情勢などで原油が高止まりするいま、ガス市場の実勢からかけ離れた高値をつかまされる主因になっている。

 欧州勢は産出国と粘り強く交渉し、市場を使いやすくする努力も重ねて、日本の7割前後の価格で仕入れつつある。

 1月には、韓国勢が米国とのシェールガス売買契約にこぎつけた、とのニュースが流れた。米国価格との連動なので、船賃などを加えても調達コストは大きく下がる。

 日本の電力会社も、ガス会社や商社と共同でLNGを買ったりする例はある。

 だが、本気で価格を抑えようという機運はなかった。高値で仕入れても料金に転嫁して利益が出る制度に守られてきた。

 顧客を大切に考えるなら、まず燃料調達の原価を下げる交渉に努めるべきだ。

 大震災で多くの工場が被害を受けた。大変な苦労で操業を再開している。だがコスト削減に努め、「値上げは権利」とは決して言わないだろう。そんなことをすれば客は他社を選ぶ。電力会社も、この厳しさを見習わなくては理解を得られない。

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会社の規律―経営に社外の目いかせ

 会社法の見直し作業が進んでいる。日本の企業統治に対する信頼を高めるのがねらいだ。

 政府の法制審議会が昨年末に発表した「中間試案」に対する各界への意見照会が終わり、このほど概要がまとまった。

 きわだつのは、経済界に広がる後ろ向きの姿勢である。

 試案には、欧米の制度を参考にこんな考えが盛りこまれた。

 ▽一定の条件を満たす会社に社外取締役を少なくとも1人置くように義務づける。

 ▽社外取締役や社外監査役になれる人の要件を厳しくして、親会社の役員や社員は「社外」扱いしないようにする。

 ▽親会社の株主が子会社の役員の責任を追及する裁判を起こせるようにするなどして、グループ経営の規律を強める。

 ところが、経団連をはじめとする経済団体の多くは、いずれについても反対を表明した。

 いわく、大事なのは形式でなく、個々人の資質や倫理観だ。各社の創意工夫と株主総会の判断にまかせよ。子会社の経営は親会社が目を光らせているから心配いらない。企業の手足をしばりすぎると、活力ある経営ができなくなる――。

 言わんとするところは分からないではない。だが、個人の資質や創意工夫にゆだねるだけでは限界があることを、数々の不祥事が物語っている。

 同じ企業風土で育った者だけで取締役を固めるやり方と、別の視点や経験をもつ人材が加わるやり方とを比べたとき、チェック機能が高いのはどちらか。

 より多くの株主の厳しい目が注がれる会社とそうでない会社とで、緊張感のある経営が期待できるのはどちらか。

 問われているのはそこだ。

 例えば、社外役員になれない人に「重要な取引先の関係者」まで含めるか、その際「重要」「関係者」の範囲をどう定めるか。そんな点をめぐって議論があるのは理解できるが、すべてノーでは話にならない。

 中堅や新興の企業経営者も、多くの投資家の目を意識しなければならない時代だ。

 オリンパス事件によって、企業統治の後進国という評価は国内外に広がった。それなのに、「今のままのルールで問題はない」といって、どれだけの支持が得られるだろう。不信はぬぐえず、日本への投資を呼びこもうという動きなどにも悪い影響を与えかねない。

 当面のリスクやコストを嫌って、かえって、潜在するリスクやコストを大きくする。そんな知恵のないことをしていては、企業の発展はおぼつかない。

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