HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52413 Content-Type: text/html ETag: "fe188-1ec6-4bae5c6d03ad0" Expires: Sun, 11 Mar 2012 00:21:11 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 11 Mar 2012 00:21:11 GMT Connection: close 鎮魂の日 重い教訓を明日への備えに : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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鎮魂の日 重い教訓を明日への備えに(3月11日付・読売社説)

 大震災から1年、鎮魂の日を迎えた。政府主催の追悼式が東京で行われるほか、被災地でも式典が予定されている。

 午後2時46分、亡くなられた方々のご冥福を祈り、心からの黙とうを(ささ)げたい。

 犠牲者は1万5854人にのぼる。行方不明のままの人も3100人を超す。いまだに肉親を捜し求める人たちの悲しみはいかばかりか。胸が痛む。

 ◆被災地の復興に「落差」◆

 宮城県石巻市の沿岸部。津波で破壊された防潮堤が無残な姿をさらし、巨大ながれきの山と、無数の廃車の集積地が目に入る。

 海に面した工場地帯と、内陸側に続く住宅街は、ほとんどが津波にさらわれた。再建にこぎつけたところはほんのわずかである。

 近くの漁港は岸壁の一部が海に沈んでいた。漁は再開できたが、網にはしばしば、がれきがかかるという。漁船の船長は「港で加工業者が営業を再開すれば、活気も戻る」と、望みをつなぐ。

 地元経済団体の幹部は「復興状況は産業、企業ごと、家族ごとに大きな落差がある。地域全体の復興にはほど遠い」と語る。「ただ、誰もが『がんばろう』という強い思いを持っている」

 その気持ちを支えたい。自治体には、これまで以上にきめ細かな対応が求められる。

 心のケアも重要な課題だ。震災の直後から不眠や不安、イライラを訴える人は多かった。

 それが、仮設住宅や自治体の借り上げ住宅などに移った後も一向に減らない。むしろ、過度の飲酒やギャンブルにのめり込む人、精神的理由で勤め先を辞める人が急増しているという。

 地元の精神科医は「雇用保険の支給が終わる。不安は募るが仕事は見つからない。帰宅のメドもたたない」ことが原因と見る。行政が将来の見通しを明確に示すことで、精神的な痛みが緩和される人は多いはず、と指摘した。

 政府と自治体が、今後の生活に希望を見いだせる復興計画を示し、目に見える形で実現していくことが重要だ。復興庁は全力で支援してもらいたい。

 ◆「想定外」を想定し直す◆

 教訓を、次の大災害への備えに生かさねばならない。

 「想定外」の津波が甚大な被害をもたらしたのが、東京電力福島第一原子力発電所事故だった。

 放射性物質の拡散が農業、漁業など産業に大打撃を与え、食品や健康への不安、風評被害も広がって、日本中に暗い影を落としている。今も6万2000人以上が福島県外に避難している。

 政府の中央防災会議の専門調査会は昨秋、「あらゆる可能性を考慮した最大級の巨大地震・津波」を前提に従来の地震・津波想定と防災対応の見直しを提言した。

 東海・東南海・南海地震については、内閣府の検討会が近く、最大級震度分布、津波高などの推計結果を明らかにする。

 首都直下地震では文部科学省研究班が、従来想定より大きい震度7の揺れが広範囲で予想される、との研究結果を公表した。死者1万1000人、経済被害112兆円の被害想定は見直される。

 こうした公的リスク評価を踏まえ、具体的な対策を検討し実施するのが政府と自治体の役目だ。

 学校、病院といった公共施設や、幹線道路に面したビルの耐震化をさらに進めたい。

 沿岸部では、防潮堤などを強化するハード面と、ハザードマップ整備といった避難を中心とするソフト面を組み合わせて、津波対策を立てる必要がある。

 肝心なのは、住民が防災意識を高めることである。ハザードマップを確認し、防災訓練に参加するのは最低限の務めだ。

 地域の避難計画を、住民が主体となって作成しておくことも求められる。専門家の意見を聞き、避難ルートや安全な中層ビル、高台などの避難場所を確保したい。

 最近は東京、大阪などで大規模な帰宅困難者対策訓練が実施されている。成果と反省点を検証し、それを次の訓練の充実につなげることが大事だ。

 ◆「減災」の追求を誓う◆

 政府は今回、地震・津波被害への対応と同時に、原発事故の鎮圧作業や放射能対策にも追われた経験から、「複合災害」への備えと対応策の検討を始めた。

 例えば、大地震に続いて都市部の広域火災や工場地帯の有毒ガス漏れが発生したり、交通機関で大事故が起きたりした場合、政府は特別な対応を迫られる。

 複合災害が起きた際の対応の優先順位付けや、指揮命令系統の整備などの検討を急ぐべきだ。

 いかなる大災害にも「想定外」を想定し、被害を最小限にとどめる「減災」を追求する――。尊い犠牲を無駄にしないために、誓いを新たにしたい。

2012年3月11日01時12分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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