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3月10日付 よみうり寸評

 1年前の10日、静岡で働く武山郁夫さん(55)は、宮城県石巻市の実家に電話をかけた。長女紗季(さき)さんの18歳の誕生日を祝うためだ◆「今度会ったら、お小遣いあげるからね」「お父さん単身生活だから、無理しなくていいよ」。これが最後の会話になろうとは知るよしもない。紗季さんも、妻も母親も津波にのまれた◆「男の俺が…守ってやれなかった…すまない」と、武山さんは、3人に泣いて謝り続けた。古里を遠く離れ、家計を支えた大黒柱を、誰が責められようか◆明日との隔たりを、これほどまでに大きく苦く思える今日はない。千利休の孫で茶人の宗旦(そうたん)は、命のはかなさを歌に詠んだ◆〈今日今日と/言いてその日を/暮らしぬる/明日のいのちはとにもかくにも〉。明日の命も不確かな世だから悔いなく生きよ、と説く。裏千家の茶室「今日庵」の由来の一つとされる◆父は紗季さんの「19歳の誕生会」を開く。娘にしてやれることをするだけ。悔いなきように。死児(しじ)(よわい)を数える親の心根が、切ない今日である。

2012年3月10日14時16分  読売新聞)

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