HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49347 Content-Type: text/html ETag: "f2e77-1432-4bad1ef955602" Expires: Fri, 09 Mar 2012 22:21:55 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 09 Mar 2012 22:21:55 GMT Connection: close 3月10日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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3月10日付 編集手帳

 川柳作家の麻生路郎(じろう)に忘れがたい句がある。〈湯ざめするまでお前と話そ夢に()よ〉。早世した小学生の長男に語りかけた一周忌の作という◆夢のなかで話そうね…。この上なく悲しい会話のはずだが、至福の時間を待つような恍惚(こうこつ)感もほのかに感じられて、いっそう深く読む者の胸にしみる。子が父に語りかける場合も、こころの哀切な弾みは同じであるらしい。宮城県石巻市の小学1年、佐々木惣太郎(そうたろう)君(7)の作文『おとうさんへ』を本紙で読んだ◆小学校の教諭をしていた父、孝さん(当時37歳)は津波にのまれて亡くなっている◆さびしくても泣かないこと、友だちができたこと、宿題もやっていることを告げて、作文は結ばれている。〈…だからおとうさん、いつもぼくのそばにいてね。ゆめのなかで、ほめてね。ぼく、いつでもまってるね〉◆桜は見たか。夏は暑かったのか。どんな正月だったのか。顧みれば、被災しなかった身にとっても、夢か、(うつつ)か、いつ何をし、何をしなかったのかさえ判然としない1年が過ぎようとしている。一瞬にしてその後の記憶を奪い去った“あの日”がめぐってくる。

2012年3月10日01時31分  読売新聞)

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