米共和党の予備選・党員集会が集中するスーパーチューズデーは決定的な勝者をもたらさないまま終了した。保守的価値観を結集する候補者がいないなか、党内に高まる対外強硬路線が懸念される。
「スーパーならざるスーパーチューズデーだった」−。現地メディアの表現が、全米十州で同時に行われた今回の予備選・党員集会の結果を言い当てている。
本選に臨む候補者指名に決定的な影響を与える日となるはずだったにもかかわらず、結果はロムニー前マサチューセッツ州知事が本選の行方を占うオハイオ州などを制しながら、サントラム元上院議員も主要州で勝利し、ギングリッチ元下院議長、ポール下院議員も戦列に残った。
混戦となっている一つの理由は、代議員選出法の変更だ。これまで一般的だった勝者総取り制から、得票数に応じて代議員を配分する方法を採る州が増えた。それだけ党内の多様な利害関係を表面化させている結果ともいえる。
もう一つは、候補者と直接関係のない政治活動に対する献金の上限設定は、言論の自由の原則から違憲、とした一昨年の連邦最高裁判断だ。これにより、建前上独立した団体による特定候補への無制限な資金提供が可能になった。当初、長期戦になれば資金繰りに窮し離脱せざるを得ない、とされてきたサントラム候補、ギングリッチ候補も、巨額支援者の資金力で延命してきた。
しかし、候補者が絞りきれない最大の原因は、どの候補者も本選でオバマ大統領に対抗するための共和党の価値観を結集できていないからだろう。
オバマ政権最大の泣きどころとされる景気問題では、このところ雇用、株価とも回復基調を示している。一時破綻に直面した自動車産業が、公的支援で立ち直ったことが象徴的だ。
共和党保守派は、ここへきて本来の主要争点ではなかった外交問題で、オバマ政権の「弱腰ぶり」を突く構えを強めている。国際的な緊張を高めているイランの核開発疑惑に対し、各候補とも一斉に武力行使容認論を打ち出している。
本選前の戦術的なレトリックである面は割り引くとしても、米国は単独主義のもと、二つの戦争に踏み切った前政権の負の遺産から今も抜け出せていない。秋の本選にかけて、過度の中傷合戦、ポピュリズムに陥ることのない選挙戦を期待したい。
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