飼い主が、猿に餌のトチの実を与えるに、朝三つ、夕に四つとしたら、猿たちが少ないと怒ったので、朝四つ、夕三つとしたら大いに喜んだ−というのは、おなじみの中国故事▼<朝三暮四>とは、見かけの違いに気を取られ、結果が同じことに気づかぬ愚かさを指すが、一方で<気の持ちよう>という心理学も思う。同じことでも、見かけを変えれば結果が違ってくる場合がある▼省エネや節電は、間もなく一年になるあの事故以来、次々に原発が止まったことで、一気に切実味を増した言葉だ。日本中で大変な努力がなされ、昨夏の電力需給窮迫を乗り切る大きな力になった▼そこで思うのだが、「省」とか「節」とか、何かを減らす、控えめなイメージの字を改める手はないか。百万キロワットの節電は、ざっと原発一基の発電と同じ効果があるのだから、もっと威張って、例えば「創電」とか、何かを生み出すプラスの印象の強い言葉にするのだ▼既に欧米には、節電を、発電(ポジ)に対する電力ととらえる「ネガワット」なる言葉があるとも聞く。3+4と4+3が同じように、どう呼んでも、することは同じだが、そこは気の持ちよう。前向きな呼び方で一層節電が進むかもしれぬ▼呼称は一例。大胆な省エネ社会実現に向け、政府はあらゆる手を尽くすべきだ。原発再稼働を焦るより前に、すべきことはたくさんある。