HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19420 Content-Type: text/html ETag: "76d405-4671-185b6400" Cache-Control: max-age=1 Expires: Tue, 06 Mar 2012 02:21:12 GMT Date: Tue, 06 Mar 2012 02:21:11 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

2012年3月6日(火)付

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 結果が見えていたロシア大統領選挙で、辛うじてニュースらしかったのはプーチン氏の涙だった。支持する群衆への勝利宣言。氷像が目元から解けだしたような人間味も、計算ずくなのか▼任期は4年から6年に延びたので、首相―大統領―首相―大統領と、足かけ20年の君臨となる。スターリン以来の長期支配は、さらに6年の上乗せもありうる▼12年前、彼が初当選した大統領選の取材を思い出す。ロシア南西部、ボルガ川沿いの青空市場で支持する理由を聞いて回った。大樹にすがろうとする答えが続いた。「あの人が出てきて、ロシアがやっと国らしくなった」「余計なことを約束しない男気がいい」▼権力の座で独裁色を強めたというより、はなからマッチョ、タフガイを望まれ当選を重ねる。主要テレビを押さえ、強敵はいない。不正や腐敗への批判で得票率は落ちたが、人気の源泉は安定感と剛腕だ▼氏は先ごろの会見で、日本との領土問題を最終決着させたいと語った。黒帯らしく柔道用語を交え、落としどころはヒキワケ、外務省にハジメの号令をかけるという。外交辞令と聞き流すのは惜しい。国内を説得できる指導者がいる間は好機だろう。ただ、日本の政治が弱すぎる▼むろん強けりゃいいというものではない。少なくとも強いだけのリーダーは危うい。民主主義の経験なら、ロシアよりずっと長い私たちである。「俺について来い」に喜々として従うことなく、悩み抜き、迷い続ける「強い民意」でありたい。

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