HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19482 Content-Type: text/html ETag: "1123fa7-46af-c3d1b9c0" Cache-Control: max-age=3 Expires: Sat, 03 Mar 2012 22:21:15 GMT Date: Sat, 03 Mar 2012 22:21:12 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

2012年3月4日(日)付

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 随筆「枕草子」で観察眼の冴(さ)えを見せる清少納言は、嫌いなものも多々あったようだ。「にくきもの」の段など、筆にかなり力が入っている。急ぐときに来て長話する客、酒を飲んでわめく男、大音響でくしゃみする者――などと容赦ない▼人だけではない。寝ている顔のまわりを飛ぶ蚊。さらに蚤(のみ)も、ほんとに腹が立つ、と。蚤については、着物の下を跳ねまわって、着物を持ち上げようとする、とリアルだ。そんな清女(せいじょ)を身震いさせるような、先のニュースだった▼恐竜時代の蚤は体長が2センチもあったとする論文を、フランスや中国の研究チームが発表した。中国で出土した化石を調べて分かったそうだ。メスは大きいもので2センチ、オスも1.4センチの威風堂々だが、「蚤の夫婦」なのは変わらないらしい▼むろん吸う血も少なくあるまい。羽毛を持つ恐竜にも寄生していたのではないかとチームは見る。怖いもの見たさはあるが、やはり今の世にいないのはありがたい▼もう一つ、清少納言を思い浮かべる記事が先ごろあった。3万年前のナデシコ科の花を、ロシアチームがシベリアの凍土の化石から咲かせた。白く、楚々(そそ)とした風情が愛らしかった。現代に甦(よみがえ)った最古の植物になるそうだ▼〈草の花は なでしこ、唐(から)のはさらなり、大和のもいとめでたし〉と、枕草子は「草の花は」の段で一番にほめている。永い眠りから覚めたロシアの花は、「をかし」だろうか「あはれ」となろうか。平安才女に、そっと感想を聞いてみたい。

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