HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 48994 Content-Type: text/html ETag: "85bbd-133d-4ba450ad5e793" Expires: Sat, 03 Mar 2012 03:21:50 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 03 Mar 2012 03:21:50 GMT Connection: close 3月3日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




現在位置は
です

本文です

3月3日付 編集手帳

 豪雨で堤防が決壊し、いままさに流されようとしている自宅に、一家は忘れ物を取りに戻る。制止する警官に母親が言う。「2冊でも3冊でも、アルバムをとって来たいんです。家族の記録なんです。かけがえがないんです…」◆かつて放送された山田太一さん脚本のテレビドラマ『岸辺のアルバム』最終回の一場面である。家族のかたちが壊れかける物語の筋はたとえ知らずとも、“かけがえのない記録”という言葉には誰もがうなずくだろう◆震災で肉親を亡くし、せめて思い出だけでもと、がれきから家族のアルバムを掘り出す人の姿を、幾度、目にしたことか◆この季節になると思い出す詩に、吉野弘さんの『一枚の写真』がある。(ひな)飾りの前で、幼い姉妹がおめかしをして座っている。〈この写真のシャッターを押したのは/多分、お父さまだが/お父さまの指に指を重ねて/同時にシャッターを押したものがいる/その名は「幸福」〉◆きょうも、どこかの屋根の下で“かけがえのない記録”が生まれることだろう。指に指を重ねてくれる者のありがたさが身にしみるに違いない。いつもの年にまして。

2012年3月3日01時26分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です