子育てを社会で支えるための新制度「子ども・子育て新システム」の関連法案の骨子がまとまった。今国会に提案の予定だが、新制度には課題もある。子育てをしっかり支える制度に育ててほしい。
どの子にも必要な幼児教育や多様な保育を提供する。就学前の子どもたちの育ちを社会で支えることが新制度の目標である。
介護保険と同じで子育ての社会化といっていい。目玉は幼稚園と保育所の「総合こども園」への一体化だ。幼稚園の教育と保育所の保育サービスを同時に提供する。
だが、一体化の最大の効果とされた待機児童解消は心もとない。ゼロ〜五歳児を預かる多くの保育所は二〇一五年度から三年以内に一体化施設に移る。一方、一体化施設になる幼稚園には三歳未満児の受け入れは義務づけなかった。
待機児童は三歳未満に多いのに、子育て家庭の期待に応えるとはいえない。そのため従来の幼稚園と三歳未満児を預かる保育所も残る。利用者には分かりにくい。
そもそも待機児童の解消は今求められている。関連法案の国会への提案が一年遅れた上、新制度開始は一三年度から段階的な実施を予定しており、迅速さの点でも待機児童対策とは言い難い。
むしろ一体化は少子化で経営環境が厳しくなっている地方の幼稚園と保育所の統合策との側面がある。統合が進めば施設数が減り利用者が不便になりかねない。小さな施設を分散して整備できるようにするが、利用者に使いやすい施設の普及に努めるべきだ。
共働き家庭からみると、延長保育や子どもが病気のときにも預かってもらえるなど多様な保育サービスがどこでも受けられるような体制が必要だ。
働いていない保護者は地域で孤立しないために子育て相談や親子が集まれる場、一時預かりをしてもらえる施設が増えてほしいと考えている。
これらは自治体が実施する。これまで以上に地域の実情を把握する責務が自治体にはある。子育て家庭が「支えてもらっている」と実感できる制度にしたい。
政府は社会保障と税の一体改革で、子育て支援を現役世代支援の柱に据えた。消費税の増税分のうち七千億円を充てる考えだ。だが、年金改革の一部の法案は増税法案提出時に間に合わなくなった。子育て支援策も増税の口実にして、増税だけされることがないように法案を出してもらいたい。
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