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近頃の乗用車は怒ったような面構えをしている。目がつり上がり、口元は一文字。理にかなったデザインはおのずと似るのだろうが、昔は微笑(ほほえ)みあり、泣きべそあり、ずっと表情豊かだった▼「笑顔」の傑作はスバル360だろう。どんぐり眼(まなこ)は利発な子どもを思わせた。富士重工の発表は1958年のきょう。愛称「てんとう虫」は、簡素だがよく走り、マイカー時代の扉を開く。四輪車に乗る生活は、夢から目標になった▼その富士重が、2月末で軽自動車の生産を終えた。累計800万台。最後の車種となった商用車サンバーは、商店や農家の足として半世紀、日本経済の浮き沈みを見つめてきた▼誇れる軽の歴史にひと区切りをつけ、富士重は個性的な普通車に力を入れるという。エコの追い風を受ける軽自動車ながら、競争は厳しく利幅は薄い。メーカーが勝ち残るには、さらに有望な分野に人と金をつぎ込む度胸が要る▼国内唯一のDRAM(ディーラム)専業メーカー、エルピーダメモリは、逃げ場のない市場を韓国勢に食われ、円高にとどめを刺された。NECと日立、三菱電機の事業をまとめ、政府が300億円を注入した国策企業の倒産である。世界を席巻した日の丸半導体も昔話になった▼産業史に残る商品とて永遠ではない。売れるほどにライバルは増え、消耗戦が始まる。高コストの国内でモノづくりを続けるには、たゆまぬ努力と戦略が必要だ。経営者が福相でいられた良き時代は遠くなり、昨今は怒ったような顔が多い。