二大政党の党首が消費税率引き上げに向けてお互いの党をまとめようと励まし合う。そんな党首討論を誰が期待したというのか。国民に示すべきは持続可能な社会保障の全体像を競い合う姿だ。
野田佳彦首相になって二度目の党首討論だが、菅直人前首相当時に民主党政権が二〇〇九年衆院選マニフェスト違反の消費税増税路線に転じて以降、党首討論は大きな対立点を失ってしまった。
消費税増税で自民党と足並みがそろい、議論の中心が増税すべきか否かではなく、民主党に上げる資格があるのか、党内をまとめることができるのかという、傍流に移ったからだ。
首相が消費税増税に「一緒に努力しようじゃないか」と呼びかければ、谷垣氏は小沢一郎元代表ら民主党内の反対論に触れ「説得できるのか。足元を固めてほしい」と求めるという具合。
消費税増税という目指す方向が一緒だから、言葉で激しく対立していてもしらじらしく聞こえる。
いずれは民主、自民両党が消費税増税法案の成立で手を握って衆院の「話し合い解散」か、小沢氏抜きでの民自連携か。そんな腹の探り合いをしているのでは、と勘繰られても仕方があるまい。
本格的な少子高齢化社会の到来で社会保障財源を確保するためには、増税が一つの選択肢であることは多くの国民が理解しているのだろう。
だとしても、増税が既定方針のように語られるのに比べ、その前提であるべき社会保障の抜本改革や、政府や国会の無駄を削る議論が低調なのには納得がいかない。
公明党の山口那津男代表は党首討論で「大綱には社会保障の全体像が示されず、一体改革の名に値しない。消費税増税だけが議論されれば、社会保障は置き去りで、増税だけが目的になる」と指摘した。その通りだ。
与野党、特に民自両党に求められるのは、協力して消費税増税に突っ走ることでなく、将来も持続可能で世代間の不公平感の少ない年金、医療、介護など社会保障制度のあるべき姿を競い合い、よりよい改革案に練り上げることだ。
政府や国会の無駄を削ることが難しいのなら、困難な課題にこそ結束して当たるべきであろう。
共同通信の世論調査では消費税増税に反対する人は50%を超えている。民自両党がやるべきことを怠り、ただ励まし合うだけでは、この数字が減ることはあるまい。
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