国内初のLCC(格安航空会社)が今日から運航を始める。現行運賃の半額以下という低料金が売り物だ。海外LCCとともに空の大競争が始まるが、安全で快適な空の旅確保を忘れてはならない。
初就航するLCCは全日本空輸や香港の投資会社などが出資したピーチ・アビエーション。午前七時に関西空港を離陸、札幌(新千歳)に同八時五十分に到着後、三十分後には再び関空に向けて飛び立つ予定だ。
LCCの特徴は地上での待機時間を短縮し、機材の稼働時間をできるだけ長くすることにある。回転率や搭乗率、従業員の生産性を高める。さらに人件費や事務管理費などコストを最小限に抑えた薄利多売のビジネスである。
ただ、低料金でも安全確保は最低条件。世界の主要LCCが最新型のエアバスA320やボーイング737などを使用するのも、機体の安全性を高め整備コストを抑えることが目的である。
優れたパイロットの確保が欠かせない。最近、全日空系航空会社で発覚した尻もち事故や山への異常接近などは大事故になりかねなかった。LCCといえども「安い悪い」では済まされない。
顧客サービスも拡充する。ピーチ社では身体障害者の搭乗をめぐり一時混乱したが、多くの人に楽しんでもらうためには顧客一人一人にきちんと配慮すべきだ。
政府は「観光立国」を掲げ、主要国との間でオープンスカイ(空の自由化)協定を締結している。海外観光客の誘致にはLCCを含む航空会社への支援が必要だ。批判の強い航空機燃料税や高い着陸料、機体にかかる固定資産税などはもっと下げるべきだ。
国内LCCは、七月から日本航空と豪カンタスグループ傘下のLCCなどによるジェットスター・ジャパンが運航を始める。八月には全日空とマレーシアの大手LCCとの合弁会社エアアジア・ジャパンが、成田空港を拠点に札幌や福岡路線を開設する。
すでに韓国チェジュ航空やエアプサン、中国の春秋航空、マレーシアのエアアジアXなど海外LCC十社が国内に就航しており、新規参入の動きもある。
日本の航空各社はこれまで羽田・成田両空港を拠点に安閑としてきた。LCC参入で新規客を発掘できればいいが、従来の需要層を奪い合うようになると消耗戦に陥りかねない。大競争が進めば世界の航空界のように、合従連衡が現実問題となることは必至だ。
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